元エリート証券マンの失墜。なぜ彼は想定被害額20億円とされる事件を起こしたのか?

 匠マネジメントを設立したのは’06年。当初はあくまで、杉本氏個人の資金を運用する会社だった。 「私は叔父の影響で馬術をずっとやっていました。大学時代には関東選手権に出場したこともあります。なぜそんな話をするかというと、子供が自閉症だと知って対処法を研究し始めたときに、実は乗馬がアニマルセラピーの1つとして自閉症に効果があるとドイツでは認められ、保険適用を受けていることを知ったのです。だから、乗馬を通じた福祉施設をつくるために、勝手のわかる投資で資金を増やそうと考えた。実際、独立して7~8年で牧場を買収しました。ただ、当初は資金が限られていたので無借金経営の小さな運送会社を900万円で買収し、その融資枠で借り入れを行い、運用を開始しました」  一般投資家の資金を運用し始めたのは’10年のことだ。 「知り合った金融コンサルタントの方が一緒にやろうと言ってくれて、私募ファンドの運用に必要な適格機関投資家の届け出を行い、一般投資家を募る営業マンも紹介してくれました。顧客情報は明かせませんが、“有名なお客さん”はすべて、その営業マンが引っ張ってきてくれたものです」  個人商店から運用会社へ事業拡大した際に、同社は「毎月2%・年間24%」の目標配当をパンフレットに記載している。 「日経225オプション取引を主な運用対象として、すでにそれ以上の利回りを出していたんです。その後、目標利回りを1.5%に引き下げましたが、高いパフォーマンスを上げた月には2~3%の配当を出すこともありました

ブラジルレアル建て債券で90%以上運用!?

 だが翌’11年、いきなり杉本氏は躓く。東日本大震災だ。 「震災時に日経平均が暴落した影響で、オプション取引で7000万円以上の損失を出してしまいました。ここから、ファンドの運用スタンスをガラッと変えてしまったのです」
高利回り投資が破綻したカラクリ

高利回り投資が破綻したカラクリ

 これを機に、ファンドは資金の90%以上をブラジルレアル建て債券に投入し続けたという。当時は同債券だけで毎月4%の配当が得られた時代。1.5%の配当を顧客に渡しても、2.5%の利ザヤがあった。だが、大半の資金を誰でも証券会社で購入できる債券に投資しては、ファンドとしての体をなしていないのは明らかだ。 「そこは、私の甘さを認めざるをえません。楽に稼げたので……」
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ブラジルレアルを買い増し続けた結果
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