セネガルの漁港から見えてくる日本の「SDGs(持続可能な開発目標)ブーム」への違和感

日本の「SDGsブーム」は「ありがた迷惑」!?

ピンクレイク

パリ・ダカラリーの終着点・ピンクレイクでは、今でも人力で湖底から塩を採る重労働が行なわれている

 そのためには、まず世界のありようを知ることが大事だ。私たちは、世界のありようについて、いったいどのくらい知っているだろうか。たとえば、セネガルの漁港を訪れたことがある読者はどれくらいいるだろうか。  筆者はたまたま行ったことがあるから、この記事を書いている。だが、ロシアのダム、ジャワ島の川、エクアドルの熱帯雨林はじかに見たことがない。普通はそうだろう。だからこそ「知る」という作業は大事なのだ。 「黄金の魚 アフリカの魚」では、漁港で働く人たちが、劣悪な労働環境に苦しみながらも外資による大規模開発に反対している様子が映し出される。なんの予備知識もなくその話だけを聞いても、なかなか理由を理解できない。  そのような状態では、知らず知らずのうちに世界のどこかの誰かを足で踏みつけた、ありがた迷惑な「開発」をしてしまう。日本の「SDGsブーム」を見ていると、そのような危険性を感じずにはいられない。  同映画祭の実行委員長は映画評論家の佐藤忠男氏。1974年には『戦争はなぜ起こるか』という本を上梓し、いまだに売れ続けている。  佐藤氏は、その本をこう締めくくっている。 「困った問題が起きたとき、その困ったことを弱いものに押し付けることはやめる、ということを世界じゅうの人が決心しなければならないのである。さあ、それはたいへんなことだ。しかし、われわれはもう、その方向に足を踏み出すよりほかに道がないのである」  この映画祭で上映される作品群は、知られざる世界の一端を垣間見るのにうってつけだ。それによって、私たちが今、無意識のうちに足の下に敷いてしまっている人を減らす第一歩になるだろう。 <文・写真/足立力也> コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
1
2
3



※「グリーンイメージ環境映像祭」の上映スケジュール等については、映画祭公式サイト(https://green-image.jp/)を参照のこと。電気の通らないモザンビークの村に銀行を設立しようとしてる合田真氏をはじめとした、多彩なゲストが登場するトークイベントなども行われる。
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会