勤労統計問題、日雇い労働者の除外の影響をなぜ政府は見ようとしないのか

上西充子
小川淳也議員の追及

小川淳也議員の凄みある追及(国会PVより)

浮かび上がってきた統計への政治介入疑惑

 勤労統計の不正問題が、経済統計への政治介入の疑いに発展してきた。追及の前線に立つ立憲民主党・無所属フォーラムの小川淳也議員は、2月4日の衆議院予算委員会でこう指摘していた。 ”まさにこの15年(2015年)の時期から、きわめて統計に対して、政治家が発言するんですよ。安倍政権のもとで。私に言わせれば、統計に政治の手が入っている。統計が政治化している。  今回、これで無理をした結果、長年、陰に隠れていた不正が明るみに出たわけです。(賃金水準が)異常に高くなったからです。そして、異常に高くなった背景には、こういう、それをそれと気づかせない、隠された意図、隠れた故意で、統計の数字に政治が介入してきた疑惑がある。”  この追及はドラマを見ているように迫力があり、国会パブリックビューイングでも2月6日に新宿西口地下で80分にわたって解説つきで紹介した。その時の様子は、こちらの映像でご覧いただける。(※記事中のレファレンスや動画については配信先によってはリンクされなくなる場合があるので、その場合はハーバービジネスオンライン本体サイトからご覧ください) ●【高画質版】#国会パブリックビューイング 政府統計不正問題 緊急街頭上映(新宿駅西口地下) 2019年2月6日  実際の質疑を見ずに小川淳也議員の上記の発言を「パフォーマンス」と切り捨てないでいただきたい。小川淳也議員の追及は、議事録も読み込みながら丹念に経緯を追ったものだ。小川淳也議員は総務省の役人出身だという。官僚の側から政治とかかわってきた経験を踏まえ、状況証拠を積み重ねながら核心に切り込んでいく小川淳也議員の質疑は、実に見ごたえがあるものだった。  小川淳也議員は質疑の論点をみずから下記の記事にまとめておられるので、あわせてご参照いただきたい。 ●統計不正を国会で糺す!本丸は「GDP」だ!! – 小川淳也|WEBRONZA 2019年2月6日

何が問題となっているのか

 統計不正の発覚として始まった一連の問題は、政治介入による統計操作の疑惑へと広がりを見せてきており、何が問題なのか、見えにくく感じる人もいるだろう。ざっくりまとめると、現状において、以下が主な論点と考えられる(他に統計関係部局の人員や予算、組織の在り方や専門能力の育成なども論点となりうるが、それは下記の検討を踏まえて、だろう)。 (1)勤労統計の不正の事実究明および検証体制 (2)勤労統計の不正に伴う過小給付への対応 (3)その他の基幹統計で露呈した様々な不正行為 (4)勤労統計の不正・設計変更と「賃金偽装」(賃金の数値を見かけ上、よく見せる)との関係、政治介入の有無 (5)GDP600兆円の目標達成に向けたGDP「その他」項目の不自然な増加と政治介入の有無  当初、厚生労働省は(2)を重視し、給付に向けたシステム対応が全く整っていないにもかかわらず、1月11日には早々に相談ダイヤルを設けた。一方で(1)の事実究明については「お手盛り」の特別監察委員会で1月22日に早々に報告書をとりまとめ、同日に処分を行った。  その事実究明の不十分さと特別監察委員会の第三者性の欠如は、1月24日以降の衆議院予算委員会で大串博志議員(立憲民主党・無所属フォーラム)らの追及によって明らかとなった。そのことは1月28日の下記の記事でも取り上げ、1月29日の国会パブリックビューイングの街頭上映でも紹介した通りだ。 ●【HBO!】勤労統計の不正調査問題、特別監察委員は果たして実際にヒアリングを行ったのか? (上西充子)2019年1月28日【高画質版】毎月勤労統計不正調査問題 緊急街頭上映 #国会パブリックビューイング JR有楽町駅中央口ガード下 2019年1月29日  この(1)の問題の追及を逃れるためか、政府は(3)の他の基幹統計の不正を公表し、さらに賃金構造基本調査の不正の報告が事後になったことを理由に(1)の問題のキーパーソンの一人である大西前政策統括官を事実上更迭し、国会答弁を逃れさせようとした(のちに参考人答弁)。  2月4日の衆議院予算委員会では、上述の通り小川淳也議員が「統計の数字に政治が介入してきた疑惑」を追及し、(4)と(5)の問題を指摘。その後の質疑では(4)の政治介入が次第に明らかになってきている、というのが現在だ。  このうち(4)について、筆者は2月16日の国会パブリックビューイングの街頭上映で通り取り上げた。今回はゲスト解説として、『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル新書、2017年)の著者である明石順平弁護士に来ていただいた。 ●【高画質版】#国会パブリックビューイング 政府統計不正問題 緊急街頭上映(新宿駅西口地下) 2019年2月16日  この日の国会パブリックビューイングは2部構成とし、第1部では統計への政治介入疑惑を取り上げ、第2部では毎月勤労統計の調査対象から日雇い労働者を除外した問題について、2月12日の衆議院予算委員会における小川淳也議員の質疑を中心に取り上げた。  統計への政治介入疑惑については、今後さらに国会質疑で追及され、報道もそれを追いかけるだろう。以下では、後者の、毎月勤労統計の調査対象からの日雇い労働者の除外問題について取り上げたい。なぜなら、明石弁護士も街頭上映で語ったように、これこそが2018年1月分からの賃金かさ上げの大きな要因である可能性が高く、かつ、そのことを政府が認めようとしていないからだ。  そしてまたこの論点は、まだ、小川淳也議員以外の野党議員にあまり注目されておらず、メディアもあまり注目していないように思えるからだ。  なお、小川淳也議員も、2月12日の質疑について、みずから下記の記事にまとめておられる。ただし、日雇い労働者を除外した問題については、短く触れているにとどまる。 ●統計不正を国会で糺す!公文書改竄を忘れるな! – 小川淳也|WEBRONZA 2019年2月13日
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一気に行われた勤労統計の手法変更
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