勤労統計の不正調査問題、特別監察委員は果たして実際にヒアリングを行ったのか?

上西充子
根本匠厚労相

国会パブリックビューイングより

 毎月勤労統計の不正調査問題に関し、1月24日に衆議院および参議院の厚生労働委員会において、閉会中審査が行われた。  1月22日に記者会見で公表された特別監察委員会の報告が、厚生労働省職員の強い関与による「お手盛り」の調査だったことが野党の追及により明らかになり、翌25日には追加の調査を実施すると根本大臣が表明する異例の事態に追い込まれた。  政府は現在の特別監察委員会で追加の調査を行うにとどめる方針のようだが、第三者性が担保されていないことが明らかになったこの特別監察委員会ではなく、真の第三者委員会による徹底した事実究明を行うべきだ。  この問題に対し、筆者は国会パブリックビューイングとして1月26日に緊急ライブ配信で国会審議を解説つきで紹介し、その内容を録画でも公開した。 ●毎月勤労統計不正調査問題 #国会パブリックビューイング 緊急ライブ配信(録画)  この1月24日の閉会中審査では、今回の調査不正が、前年度比の賃金の伸び率を高く見せるための「アベノミクス偽装」「賃金偽装」だったのではないか、との疑惑が出ている。その点を明らかにするためにも、事実関係を明らかにすべきだった特別監察員会がどのように「お手盛り」だったのかを整理しておきたい。  そして、国会答弁の中で定塚官房長は、処分に関わるヒアリングなのでヒアリングの実施概要を明らかにしないのがルールである旨を答弁したが、昨年の裁量労働制データ問題をめぐってはヒアリングの実施概要は報告書に明記されており、この定塚官房長の答弁は虚偽答弁であることを指摘したい。

調査不正の概要とこれまでの経緯

 まず、これまでの経緯を簡単に整理しておこう。昨年12月28日に朝日新聞が勤労統計の調査不正を報道して問題が明るみになった(参照:朝日新聞)。  1月11日には厚生労働省が「毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて」として経緯を公表(参照:厚労省発表)。問題は多岐にわたるが、現在、焦点となっているのは次の2つの事実だ。 (1)2004年以降、全数調査するとしていた東京都の500人以上規模の事業所について、およそ3分の1の事業所だけを抽出調査していた。抽出調査を行っていたことは公表されておらず、総務省には全数調査であると報告し続けていた。また、抽出調査であれば行われるべき復元処理が行われていなかったため、2004年から2017年にかけて、賃金の額が本来よりも低めに公表されることとなった。 (2)2018年1月分からは、東京都の500人以上規模の事業所について、抽出調査を続けた上でその結果を復元し、実態に近づける処理が行われた。しかし、そのことは公表されなかった。その結果、2017年の値と比較した2018年の賃金の前年同月比の伸び率が、実態とは異なり、過大に示されることとなった。  特に2018年6月分は、速報値(8月7日公表)で3.8%増、確報値(8月22日)で3.3%増と大きな伸びを示し、アベノミクスの成果がようやく賃金に波及したかのように大きく報じられていた。9月20日の総裁選を控えた時期だ。結局、1月23日に公表された再集計値では、6月分は3.3%増から2.8%増へと0.5ポイントも下方修正されている(参照:厚労省発表)。  また、2018年1月からは、 ●ローテーションサンプリングの導入による一部のサンプルの入れ替え(今回は半数を入れ替え)。従来は行っていた遡及訂正を今後は行わないとの決定 ●ベンチマークの更新 という2つの変更も併せて行っていたため(参照:総務省第126回統計委員会資料7-2)、調査不正が明らかになる前から、前年同月比での断層が生じ、変化が的確に読み取れないとのエコノミストらの指摘があった。そのため、サンプルの入れ替えがない「共通事業所」のみを取り出した「参考値」が公表されるようになり(参照:厚労省「毎月勤労統計調査-平成30年8月分結果速報」の「概況」)、昨年6月分についての参考値の値は1月23日の発表では、前年同月比1.4%増となっている。  1月24日の衆議院厚生労働委員会では、伸び率を見る際には公表値(再集計値)の2.8%と参考値(共通事業所)の1.4%のどちらを見るのが適切かと、横山均総務省大臣官房審議官に国民民主党の山井和則議員が問うたところ、1.4%だと横山審議官は明言。昨年1年間の実質賃金の伸び率は年でマイナスになると山井議員は指摘し、再集計で公表された2.8%もなお賃金偽装、アベノミクス偽装ではないかと指摘している。  そのように、この間の経済情勢の判断も揺るがし、10月に予定されている消費税増税は妥当であるのかという判断も揺るがす事態を今回の毎月勤労統計調査の不正は招いているわけだが、この問題に対して厚生労働省が設けた特別監察委員会が行った調査が全く「お手盛り」の調査であった、というのが1月24日の国会審議で明らかになったことだ。
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「お手盛り」の特別監査委員会
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 1月28日(月)18:30からは新宿西口広場にて、国会審議映像をさらに2つ追加し、筆者に加えてゲスト解説として全労連の伊藤圭一・雇用労働法政局長も迎えて、生解説つきで国会審議を緊急街頭上映する予定。
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