現実と比較すれば、あまりに美辞麗句で粉飾だらけの安倍首相施政方針演説
2019.02.13
第1回、第2回)。
前回まではエビデンスをもって確かめなければならないものがたくさんありましたが、ここからは「言っていることとやっていることが全然違うやん!」というツッコミを入れるだけの作業になりますので、もう少しテンポ感を持って検証できると思います。さっそく、見てまいりましょう。
安倍晋三総理は、日本の教育を無償化することを発表しました。無償化すると言っても、最もお金のかかる大学の授業料が無償化されるのではなく、3歳から5歳までの「幼児教育」と私立高校の無償化をしようとしており、これと引き替えに消費税を10%にするという話をされています。
多くの先進国で教育の無償化が図られている中、日本はだいぶ遅れてようやく無償化が実現するのですが、ここにもいくつかのカラクリが存在しますので、しっかりチェックしておく必要があります。
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我が国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。
平成の30年間で、出生率は1.57から1.26まで落ち込み、逆に、高齢化率は10%から30%へと上昇しました。世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、これまでの政策の延長線上では対応できない。次元の異なる政策が必要です。子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望を叶えることができれば、出生率は1.8まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと、大きく転換していく。そのことによって、「希望出生率1.8」の実現を目指します。
10月から3歳から5歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校・中学校9年間の普通教育無償化以来、実に70年ぶりの大改革であります。待機児童ゼロの目標は、必ず実現いたします。今年度も17万人分の保育の受け皿を整備します。保育士の皆さんの更なる処遇改善を行います。自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実を進めます。
来年4月から、公立高校だけでなく、私立高校も実質無償化を実現します。真に必要な子どもたちの高等教育も無償化し、生活費をカバーするために十分な給付型奨学金を支給します。
家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる。そうした社会を創り上げてこそ、アベノミクスは完成いたします。子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。多くの幼い命が、今も、虐待によって奪われている現実があります。僅か5歳の女の子が、死の間際に綴ったノートには、日本全体が大きなショックを受けました。子どもたちの命を守るのは、私たち大人全員の責任です。あのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。何よりも子どもたちの命を守ることを最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取組を警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
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まず、安倍晋三総理が自民党総裁、つまり、総理大臣でいられる任期は2021年までとなっています。再び自民党が総裁の任期を延長するか撤廃するというなら話は別ですが、どのみち、あと2年ちょっとで終了することになっているわけです。ということは、安倍晋三総理は30年かかって1.57から1.26まで減ってしまった出生率を、わずか2年ちょっとの間に1.8まで持っていかなければなりません。これは誰がどう見ても非現実的な話です。
だから、安倍首相は「希望出生率1.8」という目標を掲げました。「希望出生率」とは、簡単に言うと、結婚した女性が子供を生みたい人数のことであり、新婚ホヤホヤの女性が「子供は何人欲しいですか?」と聞かれて、「うーん、自分の子供たちで野球チームが作りたいな!」のアレです。こうなっちゃうと「9人」になってしまうわけですが、希望で良いのであれば、どうにでもなってしまう数字だと言えます。
人々が子供を生まなくなってしまった理由は、教育にお金がかかるからではありません。自分の生活にいっぱいいっぱいで、結婚することさえできないので、子供を産んで育てるだけの経済的な余裕がないことが一番大きいのです。また、私立高校の無償化を宣言していますが、これは「授業料の無償化」であって、公立も私立も「無償化=0円」だと思ってはいけません。私立高校には公立高校にはない設備が充実していたり、独自の教育を受けられたり、高校の名前がブランドだったりするので、授業料以外の部分は負担しなければなりませんし、公立高校もPTA会費、生徒会費、修学旅行積立金、実習費などの費用は支払わなければならないため、こちらも完全なる無償というわけではありません。
もっとも「0円」にならなくても家計の負担が軽減されていることに違いはないのですが、それにしても、どうして私立高校にそんなに優しいのかと思うかもしれません。安倍晋三総理のまわりには、不思議なことに教育事業の関係者が集まります。森友学園や加計学園、第2回の検証でも出てきた保育業大手の「ポピンズ」など、それぞれ私立の学校を運営する人たちが安倍晋三総理のもとに集まり、さまざま補助金を受け取ったり、土地を融通してもらったりしているのです。
これは安倍晋三総理が愛国カルト思想を持つ連中に支持され、その支持者の意向を受けて子どもたちに「愛国心」を養う授業をしたいという思いがあること、一方で、少子高齢化で経営が厳しくなっていくことが予想される学園側は「経営を安定させたい」という思惑という双方のニーズが一致しているから出来上がっている関係です。
私立高校が無償化されることは、一見、子どもたちのためにやっていることのように見えて、実際には、少子化の荒波で溺れそうな私立高校を助けてあげるという意味合いがあるのです。補助金をもらう立場の学校関係者は自民党に足を向けて眠れないので、これもまた大きな組織票が自民党に入るということでもあるのです。
1月28日に行われた安倍晋三総理の施政方針演説について、片っ端からツッコミを入れながら検証していく企画の3回目になりました(参照:
補助金目当てに政権に群がる教育屋
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