Amazon・ベゾスの新型ロケットが売れたワケは、「大は小を兼ねる」にあり

鳥嶋真也
フェアリングを分離した瞬間

ニュー・グレンがフェアリングを分離した瞬間の想像図。フェアリングの中に衛星が入るため、すなわちフェアリングの大きさが、搭載できる衛星の大きさ(あるいは数)となる (C) Blue Origin

ニュー・グレンがデファクト・スタンダードになるか

 さらに、フェアリングが大きいということは、これまで存在しなかったような、巨大な衛星を搭載することも可能になる。たとえば巨大なアンテナをもった通信衛星や、大きな口径の宇宙望遠鏡など、その可能性は計り知れない。  とくに前者は、通信衛星のコストパフォーマンスの大幅な向上につながる可能性があり、ブルー・オリジンも積極的にアピールしている。今後、ニュー・グレンのフェアリングの大きさに合わせた、規格外の大きさの衛星が出てくるかもしれない。  さらにスペースXも、現在開発中の巨大ロケット「スターシップ/スーパー・ヘヴィ」では、直径9mの機体でもってして、ニュー・グレンよりもさらに広い衛星搭載スペースを提供しようとしている。  一方で、日本を含む、それ以外のロケットにとっては、こうしたニュー・グレンやスターシップによる打ち上げを前提とした巨大衛星が「デファクト・スタンダード(事実上の標準)」になると、大きな脅威となる。  フェアリングの大きさは、ロケットの機体の大きさに左右される。機体直径よりも多少大きなフェアリングを装着することはできるが、空力のバランスなどの問題などから限度がある。従来からあるロケットのほぼすべて、そして日本や欧州などが開発中の次世代ロケットも、機体の直径は4~5mほどなので、直径7m以上もの巨大なフェアリングを積むことは難しい。  つまり、巨大フェアリングによる打ち上げを前提とした衛星が登場してくると、それに対応できないロケットは、衛星打ち上げ市場において、ニュー・グレンやスターシップと同じ土俵にすら立てないということも起こりうる。  実際、衛星の大きさや性能は、その時々において主流となるロケットの性能に合わせて設計、開発される傾向がある。たとえば欧州の「アリアン5」ロケットがシェアの半分をにぎっていた2000年代は、アリアン5による打ち上げを前提にした設計の衛星が多かった。  しかし、アリアン5より安価なスペースXのファルコン9が登場した昨今では、アリアン5よりも衛星側の負担が増える(搭載する燃料の増加など)にもかかわらず、ファルコン9による打ち上げを前提にした衛星が多く登場している。つまり、負担増を加味しても、ファルコン9で打ち上げたほうがトータルでは安く済むといったメリットが生まれたことから、衛星会社がそちらを好み始めたのである。 「大は小を兼ねる」ということわざは有名だが、実際の生活に置き換えると、必ずしもそうではない場合や、適応できるにしても限度がある場合が多い。  では、ロケットにおける、”強大な打ち上げ能力と巨大フェアリングをもつロケットで、大きな衛星や小さな衛星をたくさん打ち上げる”という用例は、はたして今後、どこまで通用することになるのだろうか。
フェアリング比較図

ニュー・グレンのフェアリング(左)と、現時点で最大のフェアリング(右)を比較した図。ニュー・グレンの大きさがよくわかる (C) Blue Origin / HARRIS

<文/鳥嶋真也> 宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: Космоград Twitter: @Kosmograd_Info 【参考】 ・Blue Origin | Blue Origin to Launch Telesat’s Advanced Global LEO Satellite ConstellationBlue Origin’s Powerful New Glenn Rocket to Launch Telesat’s Advanced Global LEO Satellite Constellation | TelesatMore Volume More Value – BLUE ORIGIN & HARRIS CORPORATION ・Blue Origin | New GlennTelesat LEO – Why LEO? | Telesat
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