ロシアの世論操作を暴く米シンクタンク報告「THE KREMLIN’S TROJAN HORSES 3.0」を読み解く

ヨーロッパ北部、スウェーデンがもっとも脆弱

 今回のレポート「3.0」では、ヨーロッパ北部、デンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンを取り上げている。この地域は概してロシアに対して否定的な態度を取っている。ロシアのプロパガンダ媒体であるスプートニクRTが根付いている国はなかった。ちなみに日本のスプートニクはある程度浸透しているようで、ふつうのメディアだと思っている人も多そうだ。  レポート全体を通して、既刊の2つに比べるとロシアのネット世論操作の浸透度は低いのは確かだ。しかし、これらの国は地理的にロシアに近く、国境を接している国もある。ロシアからの移民もいる。いまのところはロシアが本腰を入れて攻撃する対象になっていないが、そうなった時は安全ではいられないだろう。  中でもスウェーデンでは極右勢力が台頭しつつあり、他の国に比べて危険が高まっている。  ノルウェーとデンマークはロシアのネット世論操作の影響をあまり受けておらず、オランダでは旅客機MH17の墜落(ロシアが撃墜したと言われている)によって同国人が多数死亡したことにより、ネガティブな雰囲気になっている。  ただし不安要因がないわけではない。ノルウェーは豊富なエネルギー資源を持っているため、ロシアから経済的な影響を受けにくいが、比較的ロシアに近い北部とそれ以外でロシアに対する意見は分裂している。ヨーロッパの他の地域でも見られるように、反移民、反権力の雰囲気が広がっている。もし、次の選挙でイタリアのような親ロシア連立政権が他の国でも成立したら、ヨーロッパは取り返しのつかない混乱に陥るだろう。それこそがロシアの狙いだ。  同レポートを踏まえて、北ヨーロッパ各国の状況について解説しよう。
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オランダ極右台頭の陰にロシアの存在
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