レーダー照射問題・国内向け嫌韓プロパガンダの結果「日本が失ったモノ」
2019.02.09
牧田寛
日本は何を「失ったのか」
今後の対応について
34)および35)
日韓軍事インシデントを安倍晋三氏の個人的意向に従って外交問題化したのは防衛省です。これによって真相究明と教訓を得ることは極めて困難になりました。
この日韓軍事インシデントにかんする実務者協議の打ち切りは、半島有事における約4万人の在韓法人保護を不可能にしかねません。
ここで再び安倍晋三氏の周辺事態法制制定に向けての「生肉演説」をご紹介します。
▼安倍首相、みんなのニュース生出演 国民のギモンSP その5 FNN 2015/07/20
安倍晋三氏は、スタジオに“生肉”(と揶揄された奇妙な)の模型まで持ち込んで、在外法人保護における自衛隊の活用と日米両軍の連携を力説しました。4万人の在韓邦人を保護せねばならない半島有事において、韓国政府、韓国軍との共同、連携は必須です。在韓法人保護の主役となる自衛隊が韓国に韓国政府の承認なしに上陸することは不可能です。それは侵略行為であって、即座に国連の旧敵国条項を発動され得ます。また、韓国軍、特に韓国海軍との協力なしに上陸することも不可能ですし、そのためには平時から相互交流を怠らないことが必須です。平時における事前の十分な経験なしでは、艦船が座礁や衝突してしまいます。
安倍晋三氏の個人的感情や防衛文官、武官の保身やメンツというくだらないもので日韓関係を決定的に悪化させた安倍晋三氏と官邸、防衛省の責任は極めて重く、この「今後の対応について」という項目は、すべて削除の上、自己批判で書き換えるべきでしょう。
30) 最終報告書の位置づけ
1/21防衛省最終報告は2019/01/21の夕方に発表されました。普通、事前に発表を予告している場合、相手の反応を見るために午前中、遅くともお昼には発表し、相手が午後には反応します。夕刻、終業前という発表時間は、相手の反応を期待しないことを意味します。
これは、この発表を持って韓国との協議を打ち切るという宣言にも現れており、要するに1/21ゴールデンタイムのニュース、具体的にはNHKニュース7での取扱を当て込んだ国内向けエクスキューズです。当日15時までに発表が報じられなかったことから、報告の位置づけは発表前に自明であったと言えます。このあたりは、とくに安倍内閣以降顕著になったとはいえ、日本政府発表を読み解く基本中の基本です。ちなみにできれば知られたくないという内容や相手にできるだけ見られたくないリーク記事は、BSニュースの1時から5時という深夜から未明の時間帯に報じられ、エクスキューズとしていることも豆知識です。
実際にこの最終報告書を見ると、93年半島核危機での北朝鮮政府の対応を思い出します。当時北朝鮮政府がNPT(核拡散防止条約)から脱退を通告し核査察を拒絶したのですが、世界からの批判と圧力に対して、封印を破った使用済み核燃料を査察に提出し、けりをつけようとしました。この不可解で無意味な対応については様々な解釈が生じ、なかには「金日成氏の英断で封印を破った使用済み核燃料を差し出せば、国際社会は納得すると考えたのだろう。」という個人崇拝を強調した説明もありました。
私は、この行為を、北朝鮮の官僚機構が金日成氏と人民に対して、使用済み核燃料を査察に提出したという釈明をするためのものであったと解しています。
今回の防衛省最終報告書も同様に安倍晋三氏と、デマゴギーの氾濫により狂乱状態に誘導された国内世論へのエクスキューズであると私は解しています。
北朝鮮という国家は、大日本帝国を模して作られていると評されることがありますが、今回の政府、防衛省と国内メディアの狂乱は、満州事変や盧溝橋事件を彷彿とさせ、まるで大日本帝国自滅前夜への先祖返りです。
93年当時、IAEA/NPTに対する北朝鮮の対応は、世界に失笑と恐怖をもたらしましたが、今回の防衛省最終報告書は、まさにそれと同じで世界から物笑いの種となり、周辺諸国からは、「あたまのおかしな軍事強国」として脅威と考えられかねません。
情けないことです。
本来ならば二国間の実務者協議によって、何が起きたのか、なぜ起きたのか、教訓は何かなど多くを引き出し、今後の重要な糧とすべき日韓軍事インシデントです。
日本国内報道が片端から政府発の嘘とデマゴギーの寄せ集めで、事実は全くないという世界でも例を見ない歴史学、社会学上の一大珍事が眼前で起きているわけですが、同様のことが生じた90年前を考えるとこのままでは日本の行く末は再度の自滅しかないでしょう。繰り返しますが、日本政府の今回の手口は盧溝橋事件の二番煎じ、そして、マスメディアの狂乱は、満州事変から大日本帝国滅亡までのそれです。まさに世界と歴史への恥さらしです。
この連載では、日韓両政府の公式声明や記者会見をもとに事実の積み重ねをご紹介し、その分析と解釈を述べてきました。日本政府の吉本新喜劇での定番ギャグような退場によって外交問題としては尻切れトンボとなり、事実解明も教訓の取得もなくなりました。日韓関係は、最悪の状況です。関心のそれほど高くない韓国メディアに対して、日本のメディアは世界に極端な醜態を晒ましたが、それが日本の実態なのでしょう。
本連載はここまでで一区切りとし、今後の動向と特にマスメディアの問題について間を開けて分析してゆこうと思います。
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