また、JRP誌は、
rewrite(論文の書き直し)ではなく、あくまでも corrigendum を出すことを要請したことは、後述する注に示すことからも明らかである。ところが、「見解」では、「
JRP誌より『修正版を出すように』との連絡を受けました」と書いてある。この「修正版」はcorrigendumのはずであるが、第4項までいくと
そうでないことがわかる。
第4項には、「
修正版を出すためには、同意が得られている方のデータのみを伊達市から再度私たちにお渡しいただき、それに基づいて再解析する必要があると考えていますが、それが可能であるか、いつ可否判断をいただけるか等については、今後委託元の伊達市と受託先の福島県立医科大学との間で協議がなされるとのことです。協議の結果が出れば、それにしたがって最善の努力をいたします。」と書かれている。
Corrigendum であったはずが、ここでは、いつのまにか「修正版」は
伊達市からデータの再提供を受けて論文を書き直すことに変わっている。JRP誌は corrigendum を出すことしか要請をしていない。それを、
論文の書き直しにすり替えるとは詐欺といわれても仕方がないであろう。
第4項には、「
二本の論文の解析に用いたデータは、福島県立医科大学の倫理委員会にて承認を受けた研究計画書に記載された通り削除しております。」と書かれている。
データの削除(正しくは廃棄)は
倫理指針違反であり、研究不正といわれても仕方がないことは、岩波の『科学』2月号に掲載された、私ともう一人の共著者の論考で指摘しており、ここではこれ以上触れないことにする。ただ、ここでいう「データの削除」は、福島県立医大に提出された研究終了報告書に付随する、資料・情報等の保管状況報告書に記述されている全データ廃棄を意味している。
「見解」では、データの廃棄だけを取り上げているが、実は研究も2018年10月31日に終了している。
すでに終了した研究で、全データが廃棄されているのであるから、論文を書き直すことができるはずがない。たとえ伊達市が再度データを医大に提供したとしても、新しい研究として研究計画書を医大の倫理審査委員会に承認してもらわなければない。論文を書いたとしても、それは、
修正版ではなく、新しい研究による別の論文である。
このような事実を隠し、JRPからの corrigendum の提出要請を、論文の書き直しであるように見せかけることは、科学者が行うことでは絶対にありえない。
データ提供に同意していない伊達市民のデータを使ったことについて、第3項に書かれているように、著者が、「報道を通じて初めて知ることになった」のではないことは、『科学』2月号の論考で明らかにしている。『科学』の論考では、この倫理指針違反に加えて、さらに
6つの倫理指針違反を著者が犯していることを示している。興味のある方は、『科学』の論考をお読みいただければ幸いである。