元トラック運転手が語る、女性ドライバーが直面するセクハラの実情

「今度スカート履いて来てよ」。現場で浴びるセクハラの数々

 これほどまでに女性トラックドライバーが少ないのには、大きな原因がある。  他でもない、女性にはやはり過酷なのだ。  今まで紹介してきた「トラックシリーズ」でも度々述べている通り、トラックドライバーの真の役割は、「トラックの運転」ではなく、「荷物を安全・確実に送り届ける」こと。 「運転作業は男性よりも、繊細で注意力のある女性のほうが向いている」という声を時々耳にするのだが、中長距離を走るトラックのハンドルを握った先に待っているのは、「重い荷物の取り扱い」や「不規則で長い労働時間」。  労働環境としては、筋力・体力のある男性のほうがどうしても有利になることが多いのである。  中でも女性ドライバーにとって深刻な問題になるのが、「トイレ」だ。  以前、「路駐で休憩する迷惑トラック」を説明するうえでも紹介したが、トラックはその大きさから、停車できる場所が極端に少ないうえ、小規模な工場や倉庫などに行くと、女性トイレが構内に設置されていないことも少なくない。  運転中、渋滞にハマれば文字通りの地獄。男性の場合は、様々な「裏ワザ」があるものの、女性はそう簡単にはいかない。  一度、事故渋滞で数時間微動だにしない高速道路で、その車列の先に幸運にも高速バスを見つけ、頼み込んで車内トイレを借りたことがあるが、そんな「トイレの神様」はめったに訪れない。  さらに、1か月に1度やってくる生理と遠方の得意先への引取り・納品が重なると、生理用品の取り換えの他、足の浮腫み、運転中で鎮痛剤が飲めない中での生理痛など、様々な身体的現象に対峙させられるのだ。  そんなブルーカラーの働く現場は、ホワイトカラーの現場よりも女性蔑視がより露骨になりやすい傾向にある。  その原因は、男性社会であること、セクハラが容認されてきた世代が比較的多いこと、そして肉体労働の現場であることが挙げられる。  初めて訪れた中規模工場で、荷降ろしをしようとトラックの荷台に乗り込んだ時、50代ほどの男性担当者にこんな言葉を掛けられたことがあった。 「たくましいね、今度来る時はスカート履いてきてよ」  筆者のトラックは「平ボディ」という荷台が箱になっていないタイプのトラックだったため、乗り込む際は、タイヤに片足を引っ掛け、大股になって上る必要があった。スカートを履けばどうなるかは、誰もが想像がつくはずだ。 「(交際)相手はウチの工場でいくらでも探せばいい」、「(重い荷物の積み込みを)手伝うから、その代わり今度デートしてくれ」、「トラックって後ろにベッドあるんでしょ」。  幸か不幸か、彼らのこうした言動には悪意がない。一部の女性がそれらに苦し紛れの笑顔で返すのは、相手が「仕事相手」だからであり、男性だからではないのだが、彼らはそれを「ウケた」と勘違いし、「女性とのコミュニケーション手段」として繰り返し口にしてしまうようになるのだ。  こうしたブルーカラーの中で働く女性のためのインフラや環境が改善されぬまま、国土交通省が2014年に立ち上げたものがある。 「トラガール促進プロジェクト」だ。 「業界イメージの改善に向けた積極的な情報発信」を行うため、同省自動車局のホームページ内にサイトを立ち上げ、トラガールのなり方や女性ドライバーへのインタビュー、安倍総理への表敬訪問の様子などを紹介している。
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違和感を拭いきれない、ピンク色のイメージカラー
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