元トラック運転手が語る、女性ドライバーが直面するセクハラの実情

橋本愛喜

トラックの荷台で作業する当時の筆者。荷台に乗り込む時は片足をタイヤに引っ掛けて大股を開かねばならない

 製造や物流業界の様々な問題が取り沙汰される昨今。これまで筆者はフリーライターとして、ジャンルを問わず執筆活動をさせていただいていたが、時流に自身の過去の経験も手伝って、最近は「ブルーカラー(生産業界の労働者)」目線での執筆やメディア出演が増えてきた。  記事が出ると、読者各位からは多種多様なご意見をいただくが、その都度必ず1通は届く文言がある。「女性だったんですね」だ。  筆者は女性だ。大学卒業直前、父親が長年経営していた超零細工場に急遽「社長代理」として働き始めた。  今まで製造や物流に関する記事は、敢えて「女性」目線では書いてこなかった。その理由は、次回「ブルーカラーの女性観」を綴る際に紹介するとして、今回は「女性トラックドライバーの実態や苦悩」、筆者がイチ個人として思う「クルマ業界の女性観」を綴ってみたい。  工場を経営していた当時、筆者を支えてくれていたのは、ヤンチャで堅物の職人ばかり最大35人。全員男性だった。  父親がワンマン経営者だったがゆえ、その流れを引き継ぐように、目に付くもの全てが自分の仕事。  比較的習得の難しくない構内清掃や経理はもちろん、現場の職人らと肩を並べて真っ黒になりながら研磨作業にあたるのも常だったのだが、こうした全業務の中でも最も多くの時間を費やしていた1つが、「トラックでの金型運搬」だった。  とはいえ、当時工場には2人の営業ドライバーがおり、差し当たり筆者がトラックに乗らねばない状況にはなかった。  そのうえ得意先は、遠いところで関西方面から上信越地方までに点在。工場には積んだ金型を待つ職人がいる手前、物流業界のトラックドライバーのように「車中泊」はできず、どんなに遠くても日帰りが原則だった。  それゆえ、関東にある工場から引取り・納品に向かえば、走行距離は1日で1,000kmになることもあり、トラックに乗ることで工場内での通常業務に手が回らなくなる可能性もあった。  それでも筆者が「乗る」と決めたのには、ある理由がある。  3K(きつい・汚い・危険)とも4K(それに加え、「細かい」)とも言われていた当時の製造現場。ポンと「ブルーカラー」の世界に入った“社会経験ゼロの若い社長の娘”が当時、得意先や職人らにこの業界でやっていこうとする「覚悟」を証明するのには、自らの意思で「過酷」に向かう姿を示すことがベストだと思ったのだ。  国土交通省によると、現在トラックドライバーに占める女性比率は、2.4%(約2万人)。全産業の女性の割合42.8%と比べると、その少なさが分かる。  中でも「長距離の大型トラックドライバー」となるとその数はさらに少なく、あれから数年経った今でも、数える程度しか存在しないだろう。実際、筆者が現役で走っていた当時は、同じように長距離を走る女性ドライバーを他に見聞きしたことはなかった。
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「今度スカート履いて来てよ」現場で浴びるセクハラ
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