なぜ、スペインやEUによるベネズエラのグアイドー暫定大統領支持表明が遅れているのか?

サンチェス首相

林の中で一人、クアイドー・ベネズエラ暫定大統領と会談するスペインのサンチェス首相(「El Pais」のYouTubeチャンネルより)

 1月29日配信の記事で、トランプ大統領がベネズエラの暫定大統領フアン・グアイドーを承認し、南米諸国も続々とそれに同調し、マドゥロ政権が追い詰められていることを報じた。  現在、マドゥロへの支持を表明しているのはキューバ、ボリビア、ニカラグア、エル・サルバドル、ウルグアイ、そして中立を保っているのがメキシコである。  しかし、多くのラテンアメリカ諸国にとっても縁が深いスペイン政府が1週間経過してもグアイドーへの支持を表明しないことにスペイン野党そして多くのラテンアメリカ諸国から不満が生まれている。同様に、欧州連合(EU)もその支持表明を渋っている。  なぜそのような事態になっているのだろうか?

ポデーモスとの連携で支持を表明できないスペイン政府

 スペイン政府やEUの支持表明が遅れている背景には、実は複雑な理由がある。  スペインの場合はペドロ・サンチェス首相の社会労働党政権は350議席の下院で84議席しか持っていない。そのため、法案を議会で通すのに左派ポピュリズム政党のポデーモスと連携している。しかし、そのポデーモスが、グアイドーが暫定大統領として宣誓したことをクーデター行為だと見做して批判し、スペイン政府及ぶEUに対して平和的な対話を要求しているのだ。(参照:「rtve」)  ポデーモス党首のパブロ・イグレシアスがこのような意見を表明したのも理由がある。実は、ポデーモスはイグレシアスを始め大学の若い政治学科のプロフェッサーによって創設された政党で、彼らはベネズエラのチャベス政権の政治アドバイザーだったのである。チャベス政権からイグレシアスらに左派政権をスペインにつくるために協力資金が流れていた。現在、彼らはマドゥロ政権とは関係を絶っているが、マドゥロ政権を批判することは常に避けているのである。  このような背景があり、しかも遅れている今年の予算案を議会で承認させるのにサンチェス政権にはポデーモスの予算案への支持が必要なのだ。仮にポデーモスからの支持がなくなれば、今年の予算案の承認は完全に不可能となり、それは現政府が望まない総選挙をもたらす要因になりうるのである。だから、サンチェス首相はグアイドーの暫定大統領として承認することは容易ではない。  しかし、その一方で1月22-25日に開かれたダボス会議に出席したサンチェス首相に対し、同会議に出席していたコロンビアのイバン・ドゥケ、エクアドルのレニン・モレノ、コスタリカのカルロス・アルバラドの3人の大統領が、グアイドーを暫定大統領としてスペインが早急に承認する必要性を訴えたのであった。そして、スペインがそのリーダーシップとなってEUもその支持表明に至ることを切望したのであった。(参照:「El Pais」)
次のページ
ひと目を忍んで電話会談したスペインのサンチェス首相
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会