供給過剰が指摘される新築木造アパートだが、表面利回りが比較的高くなることもあり、投資案件としての人気は今なお根強い
グル:今から初心者が不動産投資始めて勝ち目あるんやろか? どエンド君はどう思う?
どエンド:サラリーマン大家さんは自己資金と金融機関が限られるので、みんな同じような物件に集まるんですよね。地銀アパートローンに当て込んだ新築木造7~8%で都内とか、もうお亡くなりになったけど、スルガ銀行だったら地方の中古RCで10%超えとか。その時々のブームがあります。
かずお:どこもレッドオーシャンだ。
どエンド:リーマン・ショック後の’10~’13年くらいのタイミングに不動産投資を始めた人はみんな勝ってて、’16年以降に買った人の大半は逃げ道がなくなってという感じ。
あくの:ほー。
どエンド:しかも、初期に買った人が「俺はこうして不動産で儲かった」と本とか出すから、それを見て始めた人が出口にされてしまう構造です。
グル:そもそもなんで不動産投資したがるんやろ?
どエンド:みんな、将来が不安なんですよ!
あくの:ですね。動機の多くは不安解消って感じです。
どエンド:でも、不動産を買ったら買ったで、そのあとはもっと不安が増えるんです!
かずお:外資勤めのエリサーが、「今、1億円稼げても、来年はわからない。だから与信あるうちに物件買いたい!」って絶叫してました。勝ち組の彼らでも不安があるんですね。
【用語解説】
注1 全国宅地建物取引ツイッタラー協会
ツイッター上で交流する不動産業者を中心に結成された業界団体。ハトのマークでお馴染みの全宅連と酷似しているが、一切関係ない
注2 エリサー
エリートサラリーマンの略。高収入を得る彼らは不動産投資において有利な存在だが、同時に悪徳業者からカモとして狙われやすい
注3 1物件1法人スキーム
新設法人で物件を買う投資手法。法人の借り入れが個人の与信とリンクしないため、個人では2億、3億円で打ち止めとなる融資が、理論上、数十億円でも引けることになる
注4 消費税還付スキーム
たとえば1億円のアパートを建てると800万円の消費税を支払う一方で、家賃には消費税が発生しない。そこで、金の売買などで課税売り上げを発生させて消費税の差額分を還付してもらう手法。新築物件の利回りを底上げするテクニックとして用いられる
注5 期限の利益喪失
「返済期限まで借りたお金を返さなくていい」(=借り手に有利)な「期限の権利」を、滞納や契約違反により失ってしまうこと
注6 スルガスキーム
スルガ銀行独自の融資姿勢のこと。リスクを取った審査基準、他行の追随を許さない審査スピードは投資家にとって高金利を補うだけの魅力があり、売主側にとってもスルガスキームで地方物件の高値売却も狙えた
注7 かぼちゃ畑
シェアハウス「かぼちゃの馬車」が林立する様子を指す。初出は東洋経済オンライン。特に足立区は80棟以上のかぼちゃの馬車が立っており、区が条例改正に乗り出す事態に
注8 ペナルティで「手付倍返し」
不動産売買契約では、買い主が売り主に手付金を支払う。契約後に売り主都合で解除に至った場合、手付金の倍額を買い主に償還。
― クレイジー大家のマル超不動産投資哲学 ―