「投票で選ばれた市長が、市民の投票する権利を奪うことは許されない」。ウーマン村本氏にハンスト青年が語った言葉

「声をあげる勇気に感動した」と村本氏

村本:県民投票をやらないという市長がやると言ってくれるまでハンストをやる、水しか飲まず座り込む、というのは、どういう覚悟で始めたんですか? 元山:いきなりハンストをやろうと思ったわけではなくて……。  と、元山氏は、東京の大学院を1年間休学することを決め宜野湾市内の実家に帰り、県民投票の会の代表になり、「米軍基地建設のための辺野古の埋め立ての是非」について県民みんなで議論して意思を示しましょうと2カ月間県内を駆けまわって署名を集め、県議会で県民投票実施の条例ができるに至った経緯から説明し始めた。村本氏はそこでさらに質問を重ねた。

原発のある土地に生まれた村本氏は元山氏の立ち上がった勇気に称賛の声を送った

村本:元山さんは、普天間が地元でしょ? 僕は福井の原発のある大飯町で育った人間として「原発反対」と言いにくい空気があるのを知ってるわけです。だから、基地のある宜野湾市に育った元山さんが、いろんな声、例えば基地の問題を言う元山さんを煙たがったり、基地について変なことは言わんといてくれという声もある中で、(「基地建設反対」の)声をあげるその勇気に感動したんですけど、元山さんの「行動し続けるエネルギー」はどこから出てくるんですか? 元山いまの沖縄の置かれている現状が、あまりにも不条理じゃないか、というのがまずあります。  そして、普天間基地をどうするか、とか、辺野古移設をどうするかねということに対して、自分の子や孫に絶対訊かれると思うんですね。「お父さん、あのとき何してたの?」と。「なんで辺野古の基地できてしまったの?」あるいは「どうして辺野古の基地建設を止められたの?」と。そのときに、そのときの政治家がどうだったとか言うんじゃなくて、自分の言葉で語りたいな、と。自分が何をしたか、を話したいと思ったんです。  (複数の)市長や議員や議長の皆さんと会ってお話もしましたが、それでも不参加という意思は変わらないという現状を目の当たりにして、どうしたらもう一回考えてもらえるかな、どうしたら県民皆が投票できるようにしてもらえるかな、と考えました。署名してくれた人は約10万人です。全県の市町村から、法律で定められた数を超える署名が集まったわけです。その思いを無駄にしたくないんです。しっかり全県でやってほしい。 村本:元山さんは、地元で生まれ育って基地があるのは当たり前だと思っていたんですよね。それが大学に入り東京で生活して気持ち変わった、と? 基地問題への無関心さを感じることも? 元山:たしかに、沖縄出身だというと、まず、羨ましいねという反応が返ってくることが多いです。その人たちは青い空、青い海、美味しい食べ物とかお酒とか、いろんなことを思い浮かべてのことだと思います。でも、言われる側は複雑で、そういう面もあるけれどもそうでない基地問題で地元が分断されたりする苦しい状況があるので素直に喜べないところ。 村本:ネットなどでは「辺野古の人たちは(基地建設を)OKしているんじゃないか」とよく言われますね。それについてはどう思いますか。 元山:自分も実際に辺野古の集落で何人かから話を聞いたことがあります。やっぱり両方の立場の人があります。反対だという立場で頑張ってきた人もいれば、仕方がないんじゃないか、という人も。でも賛成だという人はなかなかいないんですよね。20年も続いた問題を造らせることで終わりにしたい、いう人はいますが。しかし、自分たちが嫌だなぁと思う普天間基地を、名護市の辺野古の人たちに押し付けるというのは、本当に苦しいことだと思ってます。母親が名護市の西側の出身ですが、そこには親戚も住んでいます。その人たちに新たな危険や騒音を押し付けるのはいやです。 村本:僕が今日ここに来たのは、この問題は辺野古の人だけの問題じゃくて、日本のことだからです。沖縄の基地のことは、日本のニュースになかなかならない。(2016年に)殺されたあの女の子の賠償は、だれがどういう風にしているのか、なんていうこともまったくニュースにならない。沖縄への基地押し付けは、国民の意識のなかにある問題だと思うんです。 元山:そうですね。歴史的にも、元々日本本土にあった米軍基地が沖縄に移された経緯があります。基地問題を、本土の人に見えなくさせてきています。本土の人が騒いだら問題になるけど、沖縄の人が騒ぐ分には問題ない、無視できる、と。これは物凄く理不尽だし、差別と感じざるを得ませんね。 村本:元山さんは、基地を造ろうとする側の集会にも、一人で行ってますよね。よく行きましたね。 元山:県民投票は反対だと言っている人たちのなかには、やはり辺野古に基地を造るべきだと言っている人もいるわけですが、県民投票でみんなの意思を示そうと呼び掛けているわたしとしては、いろんな人の意見を聞くことは大事だと思っています。
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