「首傾げ」に気付き、ミス・コミュニケーションを防止しよう
そうとは言っても相当のトレーニングは大変なので、本稿の最後にトレーニングなしですぐに使えるしぐさと微動作について紹介したいと思います。
ここで紹介するしぐさは万国共通ではありませんが、私たち日本人がよくするしぐさです。それは「首傾げ」です。
意味は、ご存知のとおり「不確か」です。「それは確かですか?」という問いに「確かです。」と答えながら首傾げが僅かに起こるシーンを、私は日常的にも様々な映像分析の中でも日々目にします。
この微動作を目にしたら本当に確かかどうか確かめてみると良いでしょう。
部長:社員全員の健康診断が終わったことを確認しましたか?何か問題はありませんでしたか?
担当社員:(僅かに首を傾げながら)はい、終わりました。問題ございません。
このやり取りはある実例をもとに少し手を加えたものです。部長の「確認しましたか?」という問いは直接的です。「問題ありませんでしたか?」という問いは間接的です。
担当社員の「はい」は前者の問いには肯定の意味を、後者の問いには否定の意味を帯びています。「首傾げ」は肯定・否定を考える必要がないところが便利です。肯定・否定どちらにせよ、担当社員は自分の発言に「不確か」という想いを抱いていると推測できるのです。
ちなみに後日わかったことですが、担当社員のこの発言時において健康診断をしていない社員がいたことがわかりました。この社員さんはウソをつくつもりはなかったと思います。
きちんと確認していなかったため、自信の発言の自信のなさが「首傾げ」という微動作に現れたのだと考えられます。
「首傾げ」は本当によく観られるしぐさです。コミュニケーションするときにちょっと気を付ければ簡単に見つけることが出来るでしょう。トレーニングはいりません。相手をちゃんと見て、質問をし、話を聞けばよいのです。
「首傾げ」が起きたら、一呼吸。相手に「それ、確か?」と聞いてみましょう。ミス・コミュニケーションがグッと減るでしょう。
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。