タイにもネット掲示板があり、最も有名な「パンティップ」というサイトを開けば、インフルエンサー的なユーザーが何人かいて、その中には日本旅行を専門に紹介する人もいる。ある日の書き込みではごく普通の小さなスーパーの解説もあった。ほかにも日本旅行を専門的に紹介するサイトも多数登場している。ドラッグストアで買えるおすすめの土産物など、マニアックと言うべきか、日本人にとっては些細な日常のことなどが取り上げられる。
最近では、筆者も最近は働きたいという相談よりも、よりマニアックな質問を受けることが増えてきた。
「新橋のどこそこのヤキトリはおいしかったが、それに似た店はあるか」
「串カツはソースの二度づけは禁止らしいが、つけたいときどうすればいい?」
「パチンコはタイ人でも問題なくできるか」
正直、タイ在住歴が日本よりも長くなりつつある筆者にはなにがなんだかわからない。
ある日本人は、大阪の新世界で会ったタイ人から「外国人が来ないようなよりマニアックな居酒屋がこの辺りにないか」というような質問をされたという。
筆者が初めてタイに来た1998年はまだ個人旅行は少なく、団体旅行で王道を巡ることが一般的な観光だった。そして、2010年ごろにはたくさんのリピーターがタイに来るようになり、団体旅行だけでなく個人旅行も増えた。ネットにはタイ人でも知らないようなマニアックなタイのネタが溢れる。なるべく手垢のついていないスポットを好み、SNSなどに一番乗りで情報をアップしたいという人が増えている。
その新世界にいたタイ人がまさに今のタイ観光客の先端なのだろう。1990年代から始まった日本人のタイ観光ブームが20年かけて変遷してきたことを、タイ人は2013年からの約5年間で通り過ぎようとしている。実際、タイだけでなくいろいろな国のリピーターがマニアックな日本を求めている。そのうち下町の駄菓子屋なども外国人で溢れることになるのかもしれない。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>
たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『
バンコクアソビ』(イースト・プレス)