なぜベンチャーはブラック企業になりやすいのか? 起業家にとっての「労務管理」

遠藤結万
過労

aijiro / PIXTA(ピクスタ)

 栄光なき起業家の連載、第三回目ですが、今回は番外編です。今回は、私自身の経験も踏まえ、なぜベンチャー企業は過重労働に陥りがちなのか、これから起業する上で何をするべきなのか?ということを、法政大学キャリアデザイン学部の上西充子教授に伺いました。

起業家と労働法

――多くの起業家が創業直後に働きすぎで体を壊したり、従業員の方も体調を悪くしたりするケースを見てきました。創業者が働くというのは、当然株主としてのリターンがあるのでわかるのですが、従業員がそこに引っ張られすぎてしまって合わせようとしてしまう部分があるのではないか、それは不健全なことなのではないか、と思うのですが、上西先生はどう思われますか。 上西充子教授(以下、上西):人を雇うっていう意識がないんですよね。  成功された社長も、苦労してお金をためて、一店から店を広げて大成功されたりしているわけですよね。そうすると、自分がこれだけ頑張ったのに、なんでお前は頑張らないんだ、ということをおっしゃる。  言いたくなる気持ちはわかるんですよ。でも、同じように頑張ったとして、創業者と同じだけの利益を得られるわけではないですよね。結局給与と残業代しか払わないわけですよね。残業代だって実質払っていなかったりするわけでしょ。立場が違うということを認識されていないんだと思います。 ――雇う側と、雇われる側には大きな違いがある、と。 上西:自分のリスクで起業して、失敗する人もいて、それはいいことだよ、と社会に許容されていますけど、人を雇う以上は、この社会の労働法というルールを守らないといけないんですよね。相手の一生を背負うとか、家族みんな面倒を見るということまでは言わないけど、自分が雇う側として労務管理というスキルを持っていないでベンチャーやるのは危ないよ、と。
上西充子先生

法政大学キャリアデザイン学部教授・上西充子先生

 お金の算段がまずかったとか、立地が悪かったとか、そういうことも大事なんですけど、労務管理はとにかく大事だよ、と。一人でやってるとか、共同経営者で一緒に儲けていこうと言うなら別ですけど、雇ったらそこは労使関係になるわけだから、変なことをやったら相手が亡くなったり、訴えられたりする可能性もあるわけですよね。訴えられたときに「なんで?」って思うかもしれないけど、「それはあなたの意識が足りないだけですよ」と。  でも、それに対して、ベンチャーって大事だよということが言われ過ぎていると思います。人を雇うときに、本当に大丈夫?と聞きたくなることもありますよね。飲食店を経営するには、食品衛生責任者の資格のある人が必要じゃないですか。でも、人を雇うときに免許があるわけではないですよね。  これ、私が書いた『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』という本なんですけど、働くっていうことはいろんなトラブルがありえて、でもそれを全然知らないままに就活したり、バイトしたり、就職する人がほとんどなんですよね。そうすると、企業が言うことが絶対になってしまうんですよね。そうすると、今度は自分がベンチャー企業を興したときにもわからないままになってしまう。 ――労働者として知識がないと、雇う側としても知識がないから適切に扱えない。 上西:自分が雇われているときは、ブラック企業に潰されるのが嫌だ、と思いますよね。自分が雇う側になったり、先輩として部下を教えたときにも、同じなんです。だから、ワークルールが必要なんです。 ――労務管理を含めた、雇う側が守るべき社会の最低限のルールが浸透していないということでしょうか。私自身、会社を作るときにいろいろ労働法を勉強して、雇うのって相当大変だし面倒だな、と感じました。
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やりがい搾取されないために
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