虐待されていた4頭の宮古馬がついに救出。しかし、いまだ楽観視はできず

虐待を受けていた宮古馬4頭の自主返還が決定

解放されたシンゴ

12月27日、S氏の馬房から解放された牡馬シンゴ

 2018年12月11日の『週刊SPA!』による宮古馬虐待問題の報道を契機に、多くのメディアがこの問題を取り上げた。馬たちの悲惨な実態に全国の人々が驚愕、多くの改善を望む声が上がった。  この事態を受けて宮古馬保存会(事務局は宮古島市生涯学習教育課)は2018年12月19日、宮古馬飼養者説明会を緊急開催。対応策と今後の方向性が検討された。  その結果、ここ3年間で死んだ16頭のうちの13頭を死なせてしまった2件の飼養者は、残った計4頭の宮古馬を自主返還することになった。虐待を生き延びた宮古馬たちは、12月27日に1頭、12月30日に3頭が別の場所に移され「これでひとまず安心」と思われた。  しかし、4頭の馬たちの返還をめぐってさらにさまざまな問題が浮き彫りとなってきたのだ。

宮古島市は「虐待」を認めず

 12月19日に宮古島市で行われた飼養者説明会では、「今回の報道によって、宮古島市には抗議や問い合わせが数百件にものぼっている」と報告された。市の担当者と宮古島保健所は、「調査を行ったが、つながれたままであるとか、水や餌を十分に与えていないといった虐待は確認できなかった」と説明した。  市の担当者は、意見交換で飼養者から「報道にあるような状態の馬がいた」という指摘を受けると「今はいない」「全部確認したわけではないが、自分たちとしては今の状況で判断するしかない」としつつも、「非常に不衛生な飼育環境であることや、狭いスペースでの飼育などは確認されており、今後改善されなければ『虐待』となる可能性が高い。警察に通報しなければならなくなる可能性はゼロではない」と述べた。  現時点で「つながれた馬はいない」というのは、これまで市は対応を怠り、やっと2018年3月頃に「綱だけははずされた」というのが実態である。短い綱につながれっぱなしで、身体を横たえることもできない馬たちを見かね、周囲から何度にもわたって抗議の声が上がっていたのだ。  餌や水が与えられていない問題についても多くのボランティアが確認している。しかし、彼らに聞き取りが行われたわけでもない。市の担当者としては、虐待を認めれば「動物愛護管理法違反」として警察への通報義務が生じ、さらには沖縄県天然記念物の管理責任を社会的にも問われることになる。だから「今は綱でつながれていない」という一点をもって「虐待は確認できなかった」としたいのだと思われる。  その説明会の場で、沖縄県の担当者からは「動物愛護管理法第44条」や「産業動物の飼養及び保管に関する基準(平成25年環境省告示第85号)」のコピーが配布された。  宮古馬に限らず、家畜動物に対して給餌や給水をやめたり、健康を損なうほどの拘束をして衰弱させたり、排泄物が堆積した施設などで使用することは「違法行為である」ということが周知されたのだ。さらに「今のままでは虐待にあたる可能性があるので、ちゃんとやってほしい」という要請も行われた。
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