幻惑する統計。 外国人技能実習生の死亡調査に最大限の慎重さを

労災イメージ

夏夫 / PIXTA(ピクスタ)

強行採決された入管法と、実習生たちの死

「出入国管理法改正案」(入管法)が11月27日に衆議院で、12月8日には参議院で強行採決されたが、その後も各メディアは「外国人技能実習制度」がはらむ数多くの問題点を繰り返し報じている。それらの問題の中には、信じがたいほどの低賃金や、休日返上の勤務、妊娠した実習生に対する中絶や帰国の強要、そして、苦痛に耐えかねた実習生たちの失踪など、日本での仕事に夢を持って実習生となった外国人たちへのハラスメント(嫌がらせ)や人権侵害になるものが数多く含まれている。  さらに、12月前半には、立憲民主党などの野党議員らが、法務省の資料に示された実習生の死亡事例を明らかにした。それにより、12月6日には、2015~17年の3年間に69人の死亡例があることが、ついで、12月13日には、2010~17年の8年間に174人の死亡例があることが判明した。野党議員らは、死亡例の中に不審死が多いのではないか、そして、実習生の受け入れ支援をする「国際研修協力機構」が把握する死亡者数との食い違いから、把握しきれていない死亡例が残されているのではないか、と追及している。  ところで、12月7~9日ごろ、この実習生の死亡者数について、Twitter上で重要な示唆を含んだ会話がなされていた。その会話の主役たちは、「日本維新の会」の足立康史議員と、評論家の荻上チキ氏である。本稿ではまず、その会話の一部を紹介するが、この2人(あるいは、どちらかの1人にでも)のキャラクターに日ごろ共感できないでいる方々にも、どうか冷静に読み、考えてみてほしい。ついで、足立議員が投げかけた重要な疑問について、その解釈を考えてみたい。筆者にとっては非常に難しい問題であるため、一足飛びに結論まで持っていくことは不可能であるが、解釈をする際に気をつけるべき幾つかの注意点を指摘しておきたい。
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足立康史議員と荻上チキ氏の会話
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