幻惑する統計。 外国人技能実習生の死亡調査に最大限の慎重さを

足立康史議員と荻上チキ氏の会話

 以下がその“会話”の冒頭部である。なお、会話の先頭には、この会話のきっかけとなった立憲民主党アカウントのツイートを一つ挿入している。 立憲民主党 CDP2017 「低賃金や長時間労働が問題になっている外国人技能実習生について、2015~17年の3年間に69人が死亡していたことがわかった。うち12人が実習中の事故によるもので、6人が自殺し、殺害された人も4人いた。」 https://twitter.com/CDP2017/status/1070555312334073858 足立康史 @adachiyasushi 間違ってたらご指摘いただきたいのですが、20万人以上いる技能実習生のうち亡くなられる方が年間20人強ということは、死亡率(人口千人あたりの死亡者数)は、0.1人となるはず。リンクによると日本人の死亡率が0.5人くらいだから、日本人の死亡率の5分の1に相当。http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/provision/2.html https://twitter.com/adachiyasushi/status/1070712416508567552 (※足立氏がTweet内で引用した資料は、生命保険文化センターによる「万一の恐れは、どれくらいの割合である?」 荻上チキ @torakare 間違ってるのでご指摘します。 【1:数値の比較対象の問題】 何かを比べるなら、条件を揃えるためにの各種調整しなければ意味がありません。例えば技能実習生は年齢が若いため、若年労働者の労災死、若者の過労自死を「参考」にするなどです。その手続きなく日本人全体と比較するのは不適切です(続 https://twitter.com/torakare/status/1070940738341335041 荻上チキ @torakare 【2.比較行為の問題】 そもそも技能実習制度については、政府はずっと建前上、「日本で技術を身につけてもらい、帰国後に各国で活躍していただく」ものと説明しています。その制度で死者が出ること自体が問題であり、また背景も異なるため、比較することが妥当なのかという問題があります(続 https://twitter.com/torakare/status/1070941830592716801 荻上チキ @torakare 【3:比較可能性の問題】 技能実習制度については、その「建前」と「本音」が乖離しているため、報告される様々な事故などが適正なデータになっているかが不透明です。他方で日本人でも「過労死」の認定に幅があるため、仮に調整したとしても、既存の政府データで適切な比較が可能なのか疑わしい。(続 https://twitter.com/torakare/status/1070942641628401664 荻上チキ @torakare 【4:解釈倫理の問題】 もろもろの条件で比較して、仮に日本人よりも死者が少ないという結果になったとして、それをどう解釈するか。死者を減らすための議論を、「比較」作業によって矮小化することはあってはなりません。「比較」は、不幸を減らすための変数解析などに使われるべきです(続 https://twitter.com/torakare/status/1070943552153149441 荻上チキ @torakare 人の死の数値化は暴力的ではありますが、それを分析することで、よりよき社会にするため、非冒涜的に活用されうる。逆に、数値の比率の問題にしてしまうことで、被害者や遺族の目線ではなく、他人事目線になったり、ある類の攻撃性を正当化することを危惧します。以上です。 https://twitter.com/torakare/status/1070944962861133824 足立康史 @adachiyasushi 萩上チキさんのご指摘は、ご尤もですね。いずれも大切な論点と存じます。 ただ、日本人全体と比べているわけではないですよ。私が挙げた0.5人は当然、働き盛りの三十代の男女の数字を均して書きました。技能実習生の人数も少なめに丸めました。 念のため。 https://twitter.com/adachiyasushi/status/1071309225584783361  この会話がなされた時、足立議員と荻上氏の双方にTwitterの字数制限によると思われる言葉足らずがあったため、2人と他のTwitter利用者たちの間で誤解が生じ、Twitterはしばらく炎上状態(罵声までが飛び交う大騒動)となった。その後、その誤解に気づいた筆者を含む数名が両者の間に入ることで、両者ともに言葉足らずと行き違いがあったことを認め、足立議員の問題提起に一理あることが認識されるようになった(そこまでの経緯の詳細に興味のある読者は、次のTogetterを参考にされたい。いささか読みにくいが、炎上の様子を含め、ことの経緯がよく分かる: 「足立康史議員と荻上チキ氏の、外国人実習生の死亡率に関するやり取りと、その反響」)。
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実習生の死亡率が低く見える理由、その解釈の難しさ
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