水道民営化をすれば水道代が安くなるという幻想

「民間ならば無駄のない経営ができる」という幻想

行政の仕事は無駄だらけだけど、民間企業なら無駄のない経営ができる」というのは完全なる幻想です。  行政はその会計を非公開にすることはできません。請求があれば情報を開示する義務があり、何にどれだけお金がかかっているのかをチェックされる運命にあります。もちろん、無駄なものにお金がかかっていることもあるかもしれませんが、それらは原則として住民がチェックでき、「これが無駄だ」と指摘し、改善させることができます。  これが民間の会社になってしまうとどうなるのか。何にどれだけお金がかかっているのかを開示する義務は基本的にありません。「そこらへんは自治体と契約する時にうまいこと開示するように義務づける」という人もいるかもしれませんが、企業も企業でそこらへんはうまいことやるのです。  日産のカルロス・ゴーン会長がうまいことやって退職後にも巨額の報酬をもらおうとしていたのと一緒です。行政だと絶対にあり得ませんが、キャバクラ代を接待交際費として領収書を切ってもらうこともできるようになります。また、民間企業の場合には、働かずにお金を儲ける「投資家」という存在が入ってくることもコストを高くする原因になります。株式を上場して企業の価値を高めれば、株価が高くなり、株主の資産も大きくなります。株主配当を奮発すれば、ますます株価は上がり、株主の資産はもっともっと大きくなります。利益を配管などのメンテナンスに使うのではなく、株主配当に使って、金持ち同士みんなでウマウマするという現象が起こるのも民間企業の特徴です。つまり、民間企業なら無駄のない経営ができるというのは、「メンテナンスにかかる費用を最小限にするに違いない」という極めて部分的な話をしているに過ぎず、それ以外の「本質的な無駄」の部分を完全に無視していると言えると思います。

行政サービスを採算だけで判断する愚かさ

過疎地の買い物難民のためにドローンを使った物資の供給などを提案したり、試行錯誤しているのも民間企業である。採算性の薄いところに新しい切り口で提案できる能力は行政より民間の方が高い」という話もされました。  ドローンには競争性があり、水道民営化には25年から30年の独占契約が結ばれることを考えると競争性がなく、ドローンと水道はまったく異なるのですが、ドローンの会社がどうして試行錯誤をしているのかと言えば、それは彼らが「ドローンに将来性を感じていて、きっと物資を運ぶためにドローンが活用される社会が来るはずだ」と考えているからです。  もちろん、本当にそんな世の中が来たら、今から取り組んでいる企業には既にノウハウを蓄積されているわけですから、ライバル会社に差をつけ、先行者利益でバクバクに儲かる可能性を秘めています。  つまり、彼らはボランティアのためにやっているのではなく、将来の利益のためにやっているのです。  この「選挙ウォッチャー」という仕事も、今はまったく儲かりません。もっと読んでくれる人が増えてもいいと思うのですが、選挙を面白いと感じてくれる人がまだまだ少ないため、ビジネスとして成立しているとは言い難い状況です。しかし、儲からないのに、それでもやり続けている理由は、この仕事が世の中に必要だということもあるのですが、将来的にめちゃくちゃ儲かると考えているからです。将来の利益のことを考えれば、今の苦しさは耐えるに値するものだと考えているのです。  このように「採算性が薄いのにやる」ことには何らかの理由があって、理由もないのに採算性の合わないことをやっている人は、よほど何も考えていない人です。また、ドローンを使ってどのようなビジネスをするのかを考えるのは行政の仕事ではありません。行政は「利益」を考えるところではなく、市民や国民に何をしたら有益であるかを考えるところであり、それは図書館のように運営だけを見たら赤字になるようなことでも、市民や国民のために有益であると考えればやるところです。  そのうち「図書館を作るなんて税金の無駄だ!」と言い出すバカタレが出てくるんじゃないかとヒヤヒヤしていますが、行政サービスにおいて「採算が合うか合わないかだけを見る」というのはバカのすることです。民間企業が新しい切り口を提案するのは、いつも「儲かるから」であることを忘れてはなりません。
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自治体に選択権があるからよい、ではない
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