水道民営化をすれば水道代が安くなるという幻想

photo by taa(PIXTA)

 先日、極右系フェイクニュースをリツイートしているような人物から「水道を民営化をすれば行政の無駄を省き、画期的なアイディアで水道代を値下げできる」という主張を受けました。一般的に「ネトウヨ」と呼ばれるジャンルの人なのですが、とにかく「水道民営化をすれば水道代は下がるんだ」という主張をしており、140文字のTwitterで一生懸命返信を試みたのですが、文字数に制限があると、なかなか伝えたいことが伝えられないので、このたび、しっかりと記事を書くことで納得していただこうと思いました。  敢えてお名前などは伏せさせていただきますが、水道を民営化して水道代が下がることは「100%ない」と断言してしまってもいいほど、水道代が下がる理屈がありませんので、今から丁寧に解説させていただきます。世の中には「水ジャーナリスト」と呼ばれる専門家たちもいて、僕はそういった方々の勉強会などに参加して知識を得ていますので、ぜひそういう専門家の意見も合わせて読んでいただけると幸いです。

水道料金が既に高い所は民営化の対象ではない

 事の発端は、こんなに水道料金が高い場所があって格差が激しいのだから、水道民営化をして料金を下げた方がいいじゃないかという話をされたことです。町が破産をした北海道夕張市では月の水道料金が20立法メートルあたり6841円。一方、水道料金が安い兵庫県赤穂市では、たったの853円だというのです。  確かに、自治体によって水道料金は大きく異なり、全国一律じゃないのは不平等のようにも思えます。しかし、水道料金が高い地域ではどうしてそんなに高いのか。べつに市役所がボッタクっているわけではなく、それだけコストがかかっているので、水道料金が上がるのはある意味、仕方がないことであると言えます。  料金が高いところを見てみると、ほとんどが北海道に集中していることがわかります。どうして北海道の水道代がこんなに高いのかと言うと、「北海道はでっかいどう」なので、各家庭に水道を引っ張るのにコストがかかります。東京のように人口が密集しているところでは1kmの水道管をいくつもの家庭が利用することになりますが、隣の家まで3kmあると言われると、3kmの水道管を誰も利用しないということも平気であるのです。  まず水道管1kmあたりの利用客が少ないので、人数で割った場合に高くなってしまうという問題があります。さらに、北海道は冬になると水道管が凍ることも珍しくありません。凍った水は膨張し、水道管を傷め、破損の原因になります。東京よりもメンテナンスが必要になるという意味でも、北海道の水道代が高いのには理屈があるのです。つまり、べつに市役所の職員が怠けていたから値段が高くなったわけではないということです。  そして、民営化によって水道料金を安くすると言うなら、ぜひとも水道料金が6000円を超えるような可哀想な自治体でやってほしいわけですが、実は、水道民営化の法律ができても、北海道夕張市をはじめ、そもそも水道料金が高くて困っているような地域では水道は民営化されません。理由はすこぶるシンプルで、「めちゃくちゃ手間がかかる割に儲からないから」です。  あなたがビジネスをする時に「Aなら手間もかからずドル箱で儲かりますが、Bだと手間と時間ばっかりかかって全然儲かりません。さあ、どっちにしますか?」と聞かれて、Bを選ぶ人なんていないはずです。「大阪市と夕張市、どちらで水道事業をやりますか?」と聞かれて、夕張市でやりたいという企業はありません。  大阪市の人口は約270万人、夕張市の人口は約8600人です。ましてや夕張市は破綻しているので行政サービスが十分ではなく、少子高齢化と過疎化が鬼のように進んでおり、これからますます人口が減っていくことが予想されます。  人口が減るということは水道を利用する人が減るということになりますので、これから期待できる売上も減るということになります。誰がどう考えても水道事業を請け負うとしたら大阪市だと思います。夕張市は財政破綻している特殊な街ですが、このように少子高齢化が進んでいて、利益が期待できない街は日本中にたくさんあります。そして、こういう街こそ水道代が高騰するリスクがあり、抜本的な改革が必要なのです。しかし、企業は儲からない街には来てくれないので、過疎化が進み、水道のメンテナンスができなくなりつつある街は水道民営化の対象にならないのです。
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「民間ならば無駄のない経営」という幻想
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