世論調査でマクロン与党を追い抜いた、国民連合のマリーヌ=ルペン党首
「マクロン氏が有権者の審判を受けるのは、2019年5月に実施される欧州議会議員選挙だ」と指摘するのは、フランス政治が専門の研究者・藤谷和廣氏。
「欧州議会議員選挙は完全比例制。政党の支持率が議席にほぼ正確に反映されます。マクロン大統領は政権発足時に63%あった支持率が、オランド政権の末期と同じ23%にまで落ちた。『分断を修復する』と宣言して大統領に就任したにもかかわらず、極右の伸長を許した1980年代の社会党と同じ轍を踏んでいます。
また、マクロン大統領が環境税を目指したのは、マクロンの支持層は高学歴・高収入で都市部に住むエリート。増税の負担感は少なく、それよりも環境の方が重要だと考えています。増税撤回は妥当な判断だと思います。
極右のマリーヌ=ルペン『国民連合』党首や急進左派のジャン=リュック=メランション『服従しないフランス』の支持層はしょうがないとしても、より穏健な層が完全にマクロン離れを起こすと、いよいよフランス社会が危うくなります。マクロン大統領は失業率を7%まで下げると公約しましたが、企業の租税負担軽減をこのまま進める限り、雇用の回復は望めません。
失業保険の拡充などセーフティネットを確保するしかありません。グローバル化時代を生き抜くにはそれもやむをえないという主張は分かります。あれもこれも高い目標を設定するのではなく、犠牲となってしまう部分についてしっかり国民に説明する姿勢が大切だと思います」
「服従しないフランス」のメランション党首
世論調査でマクロン与党の共和国前進に投票すると答えたのは、本年5月では33%で、極右の国民連合は12%だった。それが、11月の調査で共和国前進に投票すると答えたのは18%で、国民連合は24%と追い抜かれてしまった。
他党の支持率を上位からあげると、サルコジ与党だった共和党が11%、服従しないフランスが9%、欧州エコロジー=緑の党が8%、立ち上がれフランスも8%、オランド与党だった社会党が4.5%となっている。世論調査を見る限り、共和国前進は日を追うごとに支持率を下げている。はたして、マクロン大統領は今後の政治行動で状況を変えられるのか。それともこのまま没落していくのか。審判は2019年5月に下される。
<文/及川健二(日仏共同テレビ局France10日本支局長)>