photo by Lorie Shaull via flickr(CC BY-SA 2.0)
フランス革命時に民衆が蜂起したとき、、マリーアントワネットは「パンがなければケーキを食べれば良いではないか」と言い放ったというのはよく知られた逸話だ。だが、これは史実ではないようだ。
いま、フランスでは革命時のような蜂起が起きている。それに対して、エマニュエル=マクロン大統領の対策は、マリーアントワネットのような呑気さだ。いま、フランスで何が起きているのだろうか。
フランスでは11月から毎週土曜日に、全国規模のデモが起きている。黄色いベストを着ていることから「黄色いベスト運動」と呼ばれている。キッカケになったのは、マクロン大統領が来年1月から燃料税を増税するという政策だ。
マクロン大統領は地球温暖化対策でエコカーを普及させるべく、来年1月から軽油やガソリンなどの増税を行おうとしたのだ。これはマクロン大統領の大統領選挙の公約だ。マクロン氏は「2040年までにガソリン車やディーゼル車を廃止して、電気自動車と水素自動車にする」と約束した。
欧州エコロジー=緑の党のダビッド=コマン党首
エコカーの転換のために、ガソリンや軽油への税金を上げる。つまり、環境税として持ち上がったのがなぜにここまで混乱を引き起こしてしまったのか。オランド政権で与党だった環境政党「欧州エコロジー=緑の党」のダビッド=コマン党首が解説する。
「私たちは環境税そのものには賛成ですが、今回のマクロン大統領のやり方はいただけない。マクロン大統領は左翼政権だったオランド大統領の下で、経済産業大臣を約2年間、務めました。本来の彼の政治姿勢は中道左派で、低所得層のための政治をするように見えました。
しかし、当選後に方向転換してしまった。マクロン政権が誕生した当初は中道勢力に勢いがあり、マクロン大統領としてもその勢いを取り込むために中道的な政策を打ち出した。ですが、今のマクロン大統領は変わってしまった。
例えば、彼が首相に任命したのはエドゥワード=フィリップ氏です。彼はフランス保守の重鎮として知られ、ジャック=シラク元大統領の最側近だったアラン=ジュペ元首相(国民運動連合初代総裁)の愛弟子で、緊縮・増税路線派です。社会保障政策で貧困層にとって負担増となる方針も出していますから、今や右寄りの政治姿勢に傾いています。
オランド政権が真っ先にやったのは、富裕層の所得税を75%にまであげて、富める者から税をとり、貧困に苦しむ人たちに還元するということでした。しかし、憲法会議が所得税75%を『違憲』と判断したために実現できなかった。
一方、マクロン氏はどうでしょうか。2018年から富裕税(ISF)を不動産富裕税(IFI)に転換しました。これは富裕層への減税です。債券からの収入(インカムゲイン)への課税を30%に一律課税とすることも実施しました。最高税率が60%でしたから、これも富裕層優先です。
だから、『マクロンは金持ちの味方だ』と言われました。燃料税増税がこれだけ盛り上がるのは、マクロン氏が貧困層には目を向けず、金持ちを優遇してきたからです」
つまり、金持ち優遇政策を推進してきたから、環境税としての燃料税の値上げが大衆課税だと思われてしまったのだ。