「水も飲まないハンスト」で収容者が倒れても変わらない、入国管理局の扱い

収容者がハンストをしても変わらない。外部の人間の協力が必要

仮放免申請書

仮放免申請書の記載内容は、氏名、生年月日、国籍、申請の理由といった、ごく簡単なもの。他には、身元保証書や誓約書などを書く必要がある。「これほど簡単な内容なのに、なぜ審査に3か月もかかるのか」と、被収容者の憤りは高まっている。

 筆者は、「これ以上のハンストはやめるべきだ」と思った。命にかかわることでもあるし、それに同センターはWさんたちの11月20日の申入書に対して、その翌日には「回答しない。仮放免の運用も変えない」と回答しているからだ。つまり、ハンストをしても効果はない。  そして、その翌日の12月6日にWさんは倒れてしまった。  こうしてハンストは終わり、同センターではまたいつもの1日が繰り返されている。今回のWさんの一件で筆者はつくづく思った。もはや中にいる被収容者がハンストなどで頑張っても何の効果もない。そうではなく、外部の人間の協力が必要だ。しかし、この問題はあまりにも知られていない。  私の耳には、今でもある被収容者が言った言葉がこびりついている。 「刑務所なら判決があるから、いつ出られるのかがわかる。でも、難民申請や仮放免申請をしているだけの私たちは、いつ外に出られるのか分からない。なぜこれほど私たちを長期に閉じ込めるのでしょうか?」 「人権」から最も遠い場所に置かれている人たち。そして彼らの声がほとんど届いていないことを、これからも筆者は伝えていきたいと思う。 <取材・文/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会