宮古馬虐待が全国に知れ渡った日、無残にも放置された仔馬の死

仔馬の虐待を知ったボランティアが命をつなぎ続けた

カイト

ボランティアが命をつないでいた、仔馬カイト

 一方で、去年も母子馬を虐待死させた飼育者S氏の厩舎に、今年新たに引き取られた母馬と、そこで生まれた仔馬「カイト」がいた。その母馬はとても健康な馬だった。その母馬を知るA氏は「性質が温厚でやさしい雌馬でした。S氏のもとに持っていかれた時には、とても健康で美しかったのです」と語る。  前の飼育者のもとで大切に育てられていたその馬は、S氏のもとでみるみる痩せ細っていった。仔馬を産んでさらに体力を消耗し、十分な餌ももらえないまま衰弱。保存会もそれを知っていながら放置していた。その結果、母馬は出産後ほどなくして死んだ。残された生後1か月の仔馬も、1週間もミルクをもらえない状態で放置されているという情報が伝わってきた。  その情報を知った地元の関係者B氏は、「仔馬は1週間もミルクを飲めていない、市の担当部署に見に行ってほしいと連絡しましたが、まったく動いてくれませんでした。居ても立ってもいられず見に行きました」という。すると仔馬はやせ細った姿で、奇跡的に生きていた。  その仔馬の危機を知った「ミャークヌーマ宮古馬の会」のC氏が仔馬の情報を発信すると、記事は次々とシェアされ、全国各地からの好意によって仔馬用のミルクやペレットがすばやく届けられた。 「その間にも、宮古島市の担当部署に仔馬レスキューのミルクを調達するように緊急要請しました。でも、市は最後まで動いてくれませんでした」(C氏)  それどころか、担当部署は「他人の土地だから立ち入らないように」と、仔馬の救出行為にストップをかけたという。S氏は、まだ草を食べることのできない仔馬に固い草しか与えずにいた。そこでボランティアたちがこっそりとミルクを与えに行っていた。彼らはS氏に見つかって、怒鳴られたり追い返されたりしながらも「仔馬の命が最優先」と、辛抱強くS牧場に通って世話を続けた。  ボランティアたちが仔馬の命をつなぎ、ようやく餓死の危機を脱した頃、S氏は「市と一緒に、小学校で仔馬のミルクやり体験をさせる」と言い出した。それを知った県外の馬関係者が驚き、ただちに市に抗議。なんとか取りやめになった。 「仔馬は一回に少量の母乳を一日何十回にも分けて飲みます。一度に子供たちが大量のミルクをやれば、仔馬の体が心配です。やっと元気になったばかりなのに……。市のほうも、馬への愛情も知識もありません」(宮古馬支援者のD氏)
次のページ
またしても死んだ仔馬
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会