宮古馬虐待が全国に知れ渡った日、無残にも放置された仔馬の死

 12月6日、宮古島のN牧場で一頭の宮古馬の雄馬が息を引き取った。  放牧中の自然事故で骨折して2か月、馬もがんばり、飼育者も懸命の介護をしたが、ついに力尽きたのだ。  その馬の名前は「ウプカジ」。現在の宮古馬のなかでは最高齢。といっても20歳で、まだまだ元気溢れる男盛り。長年のリーダーで、N牧場を代表する存在でもあった。  そのウプカジの怪我や闘病の様子は、N牧場を応援する会のサイト「ミャークヌーマ宮古馬の会」(現在は閉鎖中)で折々に発信され、それを見た全国のフォロワーからはたいへんな反響と応援があった。

最後まで手を尽くされ、死んでいった宮古馬ウプカジ

ウプカジ

N牧場のリーダー馬ウプカジは、牧場関係者によって手厚く葬られた

 N牧場は、飼育者の中でも最多頭数を飼育していて(41頭のうち27頭)島内の飼育者のなかでも、馬たちがのびのびと育てられている姿を見ることができる飼育牧場だ。もっともそれは自己負担で、年間200万円ほどの赤字を補填しながら、ギリギリ支えられているに過ぎない。飼育者の負担は限度を超えている。  ウプカジは馬にとって致命的な後足の骨折をし、事故当初はN牧場でも“安楽殺”がよぎった。しかしウプカジの快復を祈り、島でできる最善のことを尽くした。その骨折治療の様子を前述の会のサイトで知った全国の馬の専門家たちからは、島の医療体制の不備に疑問の声も寄せられ、サポートの申し出もいくつか寄せられた。 「とてもありがたいお申し出をいただいて感謝しましたが、どれもウプカジを島外に出して手術するというものでした。費用はもちろん、半野生の放牧で育った馬のストレスを考えると、とてもお受けできなかった」(N牧場主)  また、大学獣医学部からのさまざまな申し出もあったが、担当課で行き違いもあり、飼育者へ届かなかったこともあったようだ。結局、島内の牛などを診ている獣医が、ボランティアで手当てをしてくれた。馬専門の医師は、宮古島だけでなく沖縄本島にもいない。N牧場主はこう語る。 「獣医さんはボランティアで来てくださるのです。診療費は宮古馬保存会から出るのですが、後からの請求など手続きの煩雑さから、保存会を通さず無料で診察してくれています。でも、だからこそ申し訳なくて、なかなか診察をお願いできないんです」  医師を呼ぶ事態というのは、一刻を争うとき。それにも関わらず躊躇せざるを得ないシステムは、助かる命も助からない結果につながる。ウプカジはこうした中でも奇跡的に2か月を生きたが、今年12月初めについに力尽きた。
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誠実な牧場主がいる一方で……
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