重要選挙ラッシュで2019はEU波乱の年か。ユーロの動きはどうなる?
2018.12.22
極右政党やポピュリスト勢力はいずれも「反移民」を掲げており、EUに対して懐疑的。欧州議会選挙でこうした勢力が議席数を伸ばすようだと、EU分裂のリスクが高まり、ユーロ売りに動く可能性もある。それを押し止めるのがドイツ・フランスの役割だが、その影響力は弱まりつつあるという。
「フランスのマクロン大統領はスカンジナビア半島から一国ずつ歴訪し、欧州統一への理解を求めています。かし、そこへ水を差したのがドイツのメルケル首相。10月の州議会選挙で連立与党が連敗した責任を取って、’21年での退陣を表明しました。マクロンが奮闘している最中での表明はタイミングが悪すぎます」
直後にマクロン氏が5日間の休暇を取ったことで、辞任の憶測も流れた。
「直近のフランスの世論調査で、ルペンの支持率がマクロンを上回っていたため、現実味がありました」
その間隙を縫うように、EUをかき回しているのがイタリアだ。
「イタリアのポピュリスト連立政権が作成した’19年度予算案には最低所得保証などのバラマキ政策が並び、財政赤字目標はGDP比2.4%に引き上げることが盛り込まれていました。前の民主党政権がEUに約束した財政赤字比率が0.8%ですから、それを一方的に3倍に膨らませたんです。当然のことながら、EUは予算案の修正を要求していますが、イタリアはほぼ無視しているような状態です」
EUが加盟国の予算案を差し戻すのは初のこと。イタリア政府が強硬姿勢を貫くようなら、これまたEU史上初となる、最大でGDPの0.5%相当の制裁金(前期GDP換算で約1兆円)が科される可能性さえあるという。
「5月には欧州議会選挙が控えていますから、EUがイタリアに対して強い態度に出れば、同じく財政問題を抱えるギリシャやポルトガルに波及する可能性もある。この2か国はともに10月に総選挙を控えています」
政治サイドを見ると不安が高まるが、金融政策面では明るい材料もありそう。ECB(欧州中央銀行)は’18年中に金融緩和を終了して、’19年夏にも利上げへという期待もあった。
「金融緩和を’18年で終了すると域内の金融機関の資金調達コストが上昇して、借り換え需要が高まる可能性もあります。それを防ぐためにECB内からTLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)の話が出てきている。域内の銀行がECBから長期の資金を借り入れるための施策です。こういう話が出てきているということは、’19年中の利上げは難しいでしょう」
こうした情勢から松崎氏のユーロに対する目線は下だ。
「ユーロ/米ドルのターゲットはひとまず1.08あたり。’17年のフランス大統領選でできた窓が開いたままですから、これを埋めにいくのでしょう。イタリアやポルトガルなど南欧にEU離脱熱が飛び火した場合、ユーロという通貨そのものの理念が問われることにもなりかねません。そのときはパリティ(1.00)までユーロが売り込まれる可能性もあると見ています」
EUを引っかき回す伊ポピュリスト政権
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