イラスト/平戸三平
英国でのBrexit(英国のEU離脱)が山場を迎え、欧州通貨が大荒れだった’18年。その一方で、米ドル/円は、変動幅が過去10年間で最低を記録。難解なチャートを前に、思うようなトレードができなかった人も多かったはず。中国経済の影響を強く受けている豪ドル、今年大暴落したトルコリラや新興国通貨も、動向を予想していなければ太刀打ちすることは難しいだろう。
そこで、各通貨の専門家&スゴ腕トレーダーが、’19年の戦略を一から解説。波乱の相場を乗り切る【FXの勝ち方】を、頭にたたき込もう。
世界をリードし続ける米国の動向を知ることなしに、為替市場では戦えない。シティバンクでチーフディーラーを務めた西原宏一氏は、’18年の米ドル/円をこう振り返る。
「’18年の米ドル/円を支えたのは相次ぐ日本企業による巨額M&Aでした。その支えが外れれば、来年は急落するリスクを抱えています」
《保守的な目標で104円、100円割れのリスクも》
西原氏、余弦氏ともに目線は下。株式市場クラッシュへの強い警戒感も共通するが、下値メドは余弦氏の104円程度に対し、西原氏は100円割れも視野に入れる。ただし米利上げの打ち止めによる株高からの円安に注意を
約7兆円を投じた武田薬品によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収を筆頭に、ルネサスエレクトロニクスや富士フイルムなどが海外企業の買収へと動いた’18年。その巨額マネーは為替市場では円売り・ドル買いとなる。つまり米ドル/円の上昇要因だ。
「M&Aに積極的になるのは、円が強いとき。米ドル/円が上昇すれば、『もう少し円高になってから動こう』と考えますから、上値は買いません。下支え要因とはなっても、上昇要因とはなりにくいんです。実際、’18年の上値も114円台。トランプラリー時につけた118円の高値には遠く及びません。ただ一方で、下値も104円と限定的でしたが、それはM&Aの玉に支えられていたから。M&A玉が出きってしまえば下支え要因が外れ、円高リスクが高まります」
アメリカの政策金利上昇も、米ドル/円相場を持ち上げる材料となった。米金利がさらに上がれば、米ドル/円も一段高くなる気はするが……。
「’18年にFRB議長に就任したパウエルは3月から3か月置きに粛々と利上げを行ってきました。おそらく12月のFOMCでも、利上げサイクルで9回目となる利上げを行うのでしょう。問題はその先。利上げ打ち止めの時期が近づいています」
利上げ打ち止めの状況下で、米ドル/円はどう動くのだろうか。