子どもたちを振り回す「2世」という鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」2>

大川総裁自身が「2世」

 長年、宗教やカルト問題を取材するフォトジャーナリストの藤田庄市氏は、著書『カルト宗教事件の深層』の中で、「スピリチュアル・アビューズ(霊的虐待)」という概念を提唱している。脅したその場で壺を買わせるなどの直接的で露骨な「霊感商法」のような問題だけではなく、カルトが集団として信者の精神を呪縛する有機的なつながりを意識しなければ、カルト問題の構造は理解できないとする意見で、その精神の呪縛を指す言葉がスピリチュアル・アビューズだ。  カルト集団と信者の有機的なつながりを見ようとするとき、明文化された教義だけではなく、教祖や幹部の個別の指示や言動、あるいはその蓄積、集団内での同調圧力、信者側の悩みや依存心、それを増幅させる集団側のはたらきかけなど、集団内での信者への支配や誘導にかかわるすべてを多面的に総合的に把握する必要がある。2世問題にも当然、こうした構図がある。しかも、しつけや教育と混同された形での宗教的な呪縛だ。  そして幸福の科学の歴史からは、大川隆法総裁自身が交霊マニア2世であり、スピリチュアル・アビューズの加害者であるとともに被害者という側面も見えてくる。
大川総裁の生家

徳島県川島町にある大川総裁の生家。少年時代の大川総裁はここで善川三朗らと暮らしていた。記念撮影をしているのは信者たち

 幸福の科学は、大川総裁(旧名=中川隆)と父・善川三朗(中川忠義=故人)、兄・富山誠(中川力=故人)の3人がスタートさせた。善川は生長の家やGLAといった新宗教にも傾倒した経歴を持つオカルトマニアだ。この父と兄が、当初は大川総裁との親子関係を隠し「運命の出会い」をした初期幹部を装って始めたのが、幸福の科学の原型だ。教団初期を知る前出の元教団職員Aさんが言う。 「大川隆法の親戚に会ったときに聞かされたのですが、もともと交霊マニアだったのは善川と富山。2人で交霊術のようなことをしていて、特に兄・富山の交霊ぶりは実に上手かったと言うんです。その親戚は、それが『いつの間にか隆が中心になってることに驚いた』というようなことを言っていました。私は隆法の母・君子さん(存命)からも直接、同じような話を聞かされています。善川と富山の交霊術は死者の霊を呼び出し、とりわけ不成仏霊への供養的な説教をするもので、それが隆には気味が悪かったらしく、父と兄の霊界研究を避けていたと。君子さん自身も少し手伝ったことがあると自慢気に言いながら、『あん子(隆)は(最初は)怖がって逃げまくっていた』と言っていました」  大川総裁は父と兄によって交霊術の世界に巻き込まれていったことになる。

しつけを放棄された霊能者

 大川総裁の霊言出版デビューは、善川著『日蓮聖人の霊言』(1985年)だ。しかしこのとき、同時期に収録されて「お蔵入り」になったもうひとつの霊言がある。当時、交霊マニアたちの間で人気が高かった「シルバーバーチ」と呼ばれる霊の言葉だ。大川親子が、この霊言を録音したテープをシルバーバーチの日本人研究者に送りつけ意見を乞うたものの相手にされなかったことで、未発表となった。  Aさんは、その「シルバーバーチの霊言」の音声を入手した。これを聴かせてもらった所、シルバーバーチ霊を降ろした大川総裁に、善川が質問をする。ところがシルバーバーチの霊は善川を見下し、馬鹿にする発言を繰り返した挙げ句、最終的には癇癪を起こして霊界に帰っていってしまう。 「交霊術では一般的に、呼び出した霊がどういうものなのかを批判的に確認するという役割も含んだ審神者(さにわ)と呼ばれる立場の人がいるそうです。シルバーバーチの霊言においては善川にその役割があるはずなのに、ただ悪態をつかれて腰砕けになっている。霊や霊媒を全くコントロールできておらず、審神者の役割を果たせていない」(Aさん)  降霊させるだけさせて、ほったらかし。スピリチュアル・ネグレクトとでも呼べばいいのだろうか。  もともと宗教や霊の世界についての知識は大川総裁以上に豊富であったであろう(そして自分を交霊術の世界に巻き込んだ張本人である)父親に対して、大川総裁が見下し毒づいている様子は、音声で聞くだけでも異常だ。 「霊言」という設定の下でなら、自分より目上の人や力関係が上の人を存分に罵ることができる。それは自分ではなく霊の意見なのだからしょうがないじゃないかというエクスキューズのもとで、不満や抑圧を発散しつつ他者をマウントできる。  シルバーバーチ霊言の録音は、そんな大川総裁のルサンチマンの逆襲のようにも聞こえる。そう解釈するとなおのこと、霊媒としての大川総裁への「しつけ」を放棄していた善川の態度に腹が立った。  宗教における大川総裁の人間性や、他者を攻撃あるいは支配するためのツールとしての霊言。善川こそが、こうした幸福の科学の病理の根幹を生み出した張本人なのではないか。  大川総裁は後に教祖となり「地球至高神」を自称するようになると、善川から教団内での実権を取り上げた。兄は90年代のうちに病死し、善川も2000年代に入って死去する。交霊術に巻き込まれた上にきちんとしつけてもらえなかった霊能者は、父に代わって主導権を握り、交霊術が生業になってしまったというわけだ。  大川総裁もまた、親兄弟によってこの世界に引きずり込まれ抜け出せなくなった「かわいそうな子」なのではないかと思えてくる。
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交霊による「虐待」の連鎖
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