国会軽視が続いた今国会、初っ端に話題になった「質問通告」について改めて考えてみた

なぜ質問通告が遅れるのか

1.そもそも開催日程が決まらない  そもそも、日本の国会においては、本会議や委員会の開催が前日に決まることも珍しくない。2日前に通告しようにも、開かれるのかわからないのでは物理的に難しい。  この点は、自民党議員からは度々批判されている他、野党議員からも様々な形で提言がなされている。 “国会の日程は基本的には前日まで決まりません。前日になってようやく「明日13時から本会議、所要時間2時間」というような予定が飛びこんできます。  地方議会は予め会期中の予定がきっちり決まっているため、地方議会の議員経験者の1年生議員の方々は、相当違和感があるようです。当方も、正直、前日まで日程が決まらないというのは参ります。  なぜこういう状況になるのか、というと、与党が多数を占めている衆院の下、内閣提出の予算や法案は、基本的には(衆院においては)修正が行われずに成立するという暗黙の前提があるため、野党が中身の議論よりも日程闘争に重きを置いているからです。(「予算の成立を遅らせて内閣を窮地に追い込む」というような、新聞紙上でよく見かける類のものです。)” (参照:決められない国会(日程)からの脱却 | 細田健一 衆議院議員 自由民主党 新潟2区)  近年の議会は、法案成立のための日程がタイトになり、いわゆる「職権立て」(理事会の合意ではなく、委員長の職権で委員会を開催すること)が増えている。 “衆院法務委員会は15日、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管法)改正案について、16日に審議入りすることを葉梨康弘委員長(自民)の職権で決めた。野党側は反発を強め、15日も各党国会対策委員長が成立を阻止する方針を確認した。” (参照:入管法、委員会審議へ 委員長職権で決定、野党反発:朝日新聞デジタル)  このような傾向も、委員会の日程が決まらなくなる要因の一つとなっている。  日本が会期制の議会制度を採用しており、会期末までに審議未了で廃案にすることが野党の目的になっている、という批判は当然ある。  筆者自身も、筆者のサイト「読む国会」で、度々通年国会を提案している。(参照:審議拒否を無くす方法 – 野党が提案すべき国会改革とは?)  一方で、慣例としては委員会理事会は全会一致が原則である。なぜなら、議会の委員長というのは立法府の一員であり、行政府に雇われているわけではないからだ。  近年、委員会委員長は政府の影響下を強く受けるようになった。すでに中立的な役職とは言えなくなっている。  例えば、先の通常国会では総理が河村予算委員長に「集中審議は勘弁して」などと述べたとして物議を醸した(河村氏は後に撤回)。(参照:自民・河村氏、「集中審議は勘弁」の首相発言紹介を撤回:朝日新聞デジタル2.大臣が官僚に依存している  そもそも、質問通告は森羅万象においてなされるべきなのだろうか? そもそも、通告がない質問というのは与野党問わず決して珍しくない。 “これも今のお答えに関連してということですので、通告しておりませんので、お答えいただけるようであればということでありますけれども”(平成30年07月05日 参議院内閣委員会 和田政宗議員)  自民党の和田政宗議員もこう質問しているが、過去5年間の衆議院・参議院議事録を「通告しておりません」で検索したところ、248件の結果があった。「通告ありませんが」「通告していないのですが」なども含めれば相当な数である。  ちなみに、こういうときは「通告していないのでわからなければ結構ですが」などの前置きがつくことが多い。  通告しない例としては、下記のようなものがある。 速報的な事柄に関する質問(朝刊の特ダネなど) 通告するまでもなく答えられるであろう質問 人間性・資質などに関する質問 やり取りの中で出てきた疑問  以前解説したとおり、予算委員会は慣例的に予算を執行する内閣の資質そのものを問うことが出来るため、幅広な質問がなされている。  そもそも、国会質疑というのは生き物である。全部通告して全部答えがわかっているなら、そもそもやる必要がない。すべて質問主意書にすればいいのだから。  だからこそ、とりわけ内閣の資質を問うような質問に関しては、通告せずに質問することはおかしなことではない。  例えば、物議を醸した桜田義孝大臣の場合、オリンピックの基本コンセプトやビジョンなどは、別に通告しなくても当然答えられて然るべき質問のはずだ。  細かい予算の細目などは当然通告すべきであるけれども、基本的な質問に対して「通告がないから答えられない」と答えるのは単純に大臣としてその職責を果たせないと判断されてもやむを得ないのではないか。 3.野党があえて遅らせている?  もちろん、「野党が質問通告を遅らせている」という批判も当然存在するだろう。  河野外務大臣はこのように述べている。 “現在のように国務大臣が国会に貼り付けになる、しかも極端な時はその日の未明に質問通告が出され、そのために、すべての日程がそれでガラガラと変わるというのは、合理的とは言えません。  特に外国の閣僚が来日し、閣僚間の会談が設定されているにもかかわらず、質問通告があればそれを変更しなければならないというのは、外交にも影響が出てきます。  予算委員会ならば、どの省庁の予算の審議は何日に行うということを決めればそれに応じて大臣の日程を事前に確保できます。  大臣が質問通告に振り回され、行政のトップとしての仕事をする時間がきちんと事前に決められないということは、官民合わせてものすごく多くの人の時間を振り回していることになります。” (参照: 質問通告 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト)  いくら日程がタイトとは言え、未明に質問通告が出るような状況は、当然野党議員にも責任の一端があるのではないか。
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「質問通告」を巡る問題点
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