COP会議場のポイントは、政府交渉団の他にも気候変動の問題に関係する多様な人々がいることです。その人々は、国連が公式に認めて、そこにいるのです。私も、国連から発行されたパスを持って、会議場にいます。つまり、
国連は意識的に交渉団以外の人々を会議場に入れているのです。それが、交渉を加速させると分かっているからでしょう。
そこで、国会にも政治に関心をもつ様々な人々を入れてはどうでしょうか。といっても、国会議員と同等に、国会審議に参加させるという意味ではありません。
年に一度、一般の人々が訪れ、議員と話をしたり、様々な意見・情報に接したり、国会の仕組みについて学んだりする「国会カミングデー」の開催です。大学では、高校生を対象に、カミングデーを実施するのが当たり前です。現役学生が校内を案内したり、体験講義を実施したり、様々なイベントを開催したりします。それの国会版です。
そして、国会カミングデーで、次のようなことを開催するのです。イメージとしては、東京ビッグサイトなどで開かれる企業の展示会やセミナーに近いものです。
●政党主催の連続セミナー
議員会館の大きな会議室をブースとして、各政党・会派に割り当て、国会議員によるセミナーを開催します。例えば、自民党ブースでは安倍首相、立憲民主党ブースでは枝野代表がそれぞれ講演し、一般参加者からの質疑応答を受けることが考えられます。
●衆参事務局や各省庁による展示・セミナー
議員会館の中規模の会議室をブースとして割り当て、パネル展示やセミナーを開催します。例えば、財務省ブースで、財務官僚が消費税アップの必要性を一般参加者に講演し、質疑応答を受ければ、真剣な議論に発展するのではないでしょうか。
●公募企画セミナー
残っている議員会館の会議室は、一般から企画を公募し、評論家や学者などの論客によるパネルディスカッションなどを開催します。
町山智浩さんが紹介したアメリカの「巨大政治イベント・ポリティコン」日本版を国会で開催するのです。例えば、
電気事業連合会会長と小泉純一郎元首相との原発・脱原発をめぐる時間無制限の白熱議論(デスマッチ)なんて企画があれば、聴衆として参加してみたいと思いませんか。
●ディープ国会見学ツアー
通常の国会見学では行かないところを含め、国会議事堂や議員会館のウラのウラまで案内するツアー。案内役の国会職員の他、与野党の国会議員が一人ずつ随行し、それぞれの視点から解説を加えてくれれば、参加者は国会の役割を深く理解できます。議事堂2階の議員食堂で食事もできると、レア感が高まります。
●国会・政治ツウ向けイベント
憲政記念館を会場に、国会図書館によるマニアックなイベントを開催してもいいでしょう。例えば、憲政記念館で議会制度研究の専門家や日本政治史の研究者、引退した長老政治家によるパネルディスカッションやセミナーを開催すれば、より深く国会や政治を知ることができます。
●国会議員の強制参加
セミナーやイベントに出る予定のない国会議員も、全員参加を義務づけたいものです。名前と党名の入った大きな名札をぶら下げてもらい、
会場をウロウロしてもらうのです。そうすれば、
一般参加者が声をかけ、国政への意見を伝えることができます。議員にとっても、名刺を配り、新たな支持者を獲得する機会になります。
いかがでしょうか。混乱が心配ならば、セミナーも含め、事前登録制にすればいいでしょう。議事堂と議員会館には、既に金属探知機が設置され、IC付の入館パスもあるので、設備面での追加コストは不要です。事前登録に漏れた方には、セミナーをネット中継で配信することも考えられます。
必ずしも無料でなく、多少の参加費を取ってもいいでしょう。一人2千円くらいの入場料を得て、経費に充てることも考えられます。
要は、国会議員と一般有権者が意見交換し、知見を共有することで、議論の場としての国会を再生する機会とするのです。右左の思想信条の別なく、国会議員に一言モノ申したい人は多いでしょう。国会議員も、言われっ放しでなく、論客や有権者に言い返したいことも多いでしょう。
分断の政治から、つながる政治へ。カギは、対話にあります。
<文/田中信一郎>
たなかしんいちろう●千葉商科大学特別客員准教授、博士(政治学)。著書に『
国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/
@TanakaShinsyu