ランスでは世界エイズデーに際して、HIV事情はどうなっているのだろうか? 自身がHIV感染者で「エイズと闘う地方議員の会」代表で創設者のジャン=リュック=ロメロ「イルドフランス圏」議会議員にインタビューした。
―――ロメロさんは自身がHIV感染者であることを公表し、10年以上にわたって『エイズと闘う地方議員の会』代表として熱心に活動され、毎年報告書も出されていますね。残念ながら日本ではHIV新規感染者が増加傾向にあります。エイズ対策はどうしたらよいでしょうか?
ロメロ:フランスの取り組みを説明いたしましょう。エイズに関する政策はかなり進歩し、ほとんど心配事がないレベルに達しつつありました。ただ、やや退歩してしまっている面もある。ただ、フランスだと幸運なことにあらゆる予防策が取れますし、あらゆる検査も可能で、そして皆治療の手段が取れます。
―――私はパリに行くたびに、取材も兼ねてですがHIV検査をします。パリ20区のうちに、一区には一つ以上は検査施設・病院がある。ネットで簡単に検査所も調べられる。さらに、LGBT専用の検査施設もある。しかも、いまは結果を聞くのに3~4日かかる本検査と血液を採取して3分で結果が分かる簡易検査もある。しかも検査所は、平日は毎日開いています。東京だと検査所が少ないですし、空いているのも週に一日だけだったり、時間も短かったりします。
ロメロ:そうですか。それは残念なことですね。ここで重要なことは、フランス人であろうとなかろうと、滞在許可証のない人でも、フランスの領土にいて陽性反応が出た人は治療を受ける権利があるということです。これはとても大事です。フランスは「エイズゼロ」の国になるよう乗り出しました。
国連が全世界に提案したことなのですが、2020年までに90%の陽性の人が診断を受けて、そのうちの90%が治療をし、治療を受けている人の90%が検査で検出できるほどのウイルスの数を持たなくなれば、2030年には世界でHIVウイルスを持たない世代を生み出せるかもしれないのです。ただ、現在フランスは2020年までに90%のHIV感染者を見つけなければいけないのに、今はまだ84%なのです。ですから、これからも進歩の余地があります。
政府の問題点も指摘しましょう。政府はLGBTコミュニティの中で、HIVが未だに重大な問題だと扱っていない。啓発が不十分なのです。本来受けるべき人たちが検査を受けていません。世界でもそうなのですが、フランスでは15万人がHIVに感染しており、この問題を今ほど軽く扱ったことはないので、もっと政治的な優先順位の高い問題として再考し、人々が検査を受けに行くようキャンペーンをするべきです。なぜなら、より多くの人が検査を受ければより多くの人が治療を受けることになり、それはつまり「エイズゼロ」のフランスを作ることになるからです。