エムバペのように、10代で世界一になる才能をどう育むのか? 元サッカー日本代表・戸田和幸が語る

「とにかく走れ」と教える日本、「XXのために走れ」と教えるスペイン

 とはいえ、バルセロナのユース組織で育ってきたという事実がマイナスに作用することもあるのだという。 「歴史を振り返っても、バルセロナは戦術的にも組織的にも非常に高度な完成度が備わり、教育程度も高い。だからこそ、ボールを持たないところからサッカーを考えるようなチームやダイレクトにゴールを目指すようなチームでは苦労するという事は過去を見れば明らかです。  その意味では、一度バルセロナから出る事になってしまったというのは彼にとって大変ではあると思いますが、考え方を変えればより多くのサッカーに触れながら成長していく事が出来るので、長い目で目ればポジティブなのかもしれません。  日本だと、まだ“とにかくやれ”とか“走れ”という指示があります。もちろんすべてのクラブではありませんがバルセロナだけでなく自分が見た他のラ・リーガのクラブでも“どこからどこに、XXのために走れ”という具体的な理由が明示されますから、選手の中に存在する教科書のページ数や、そこに書き記される項目の数には大きなやはり違いはあると思います」  久保建英を単体として評価すると、どうなるか。 「一人で局面を打開していく為の爆発的なスピードとか、相手と接触したときにきちんとブロックしながらゴール方向へと向かっていけるだけの身体的な強さはまだ備わっていないとは思いますが、空間認知・スペースを見つける目と実際にそこに入っていくタイミングはもちろん、動きながらのテクニックや、ある一定のスピード下でも常に複数の選択肢を持ちながら、より良いものを選択し形に出来るだけの技術も持っています。  尚且つ、最後まで判断を変えられる、ギリギリまで待つ事が出来るのも彼の大きな武器だと思います」  FC東京時代からの彼を戸田はどう見ていたのか。 「FC東京の試合は何度か見た事があってマリノスに移ってからは解説も担当しました。  ポジショニングについては確実に相手守備に影響を与える、もしくはボールが来ればダメージを与えることが出来る場所に立っています。ただしなかなかそこにボールが来ない。  相手の守備を見ながらライン間やギャップに上手く潜り込んでいる時じゃなく、動きが止まった状態でボールを受け取ると、身体的なところで飛ばされてしまう事はありますね。  だから一般の方はボールが選手に渡ってからのプレーを見る事が多くなるので“久保フィジカルが弱い”という印象を受けてしまうかもしれませんね」  エムバペについては、「欠点がない」と語る。 「19歳とまだまだ若いので自分のやりたい事が先に来て判断力に改善の余地がと思えば、そんなことはない。足元の技術、スピードは言うまでもありませんが、判断力、インテリジェンスはどう見ても19歳ではない。老成しているというか、老獪ですよね」  ということで、次回は戸田が監督になったらエムバペにどう対処するのか、そして今だから話せる2002年W杯での裏話などについて聞いていきたい。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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