エムバペのように、10代で世界一になる才能をどう育むのか? 元サッカー日本代表・戸田和幸が語る

タカ大丸
戸田和幸

2002年W杯、赤いモヒカンの勇姿がファンの記憶に残る戸田和幸

「なんで、今日僕に会ってくれたんですか?」  男は聞いてきた。筆者は思わず噴き出した。 「何言ってるんですか? 少しでも仕事でサッカーに関わっていて、私の世代で、2002年ワールドカップを見ていた男なら、誰でも会いたい人に決まってるじゃないですか」  そんな控えめなことを筆者に聞いてきた男の名前は、戸田和幸という。2002年日韓ワールドカップにおいて赤いモヒカン頭で全試合フル出場、「潰し屋」のボランチとして決勝トーナメント進出に大きく貢献した男、つまり筆者の世代の男たちの輝ける星である。  その後戸田はイングランド、オランダと渡り歩き、日本でも数多くのクラブを経由し、また韓国、シンガポールでの日々も経験したのち2013年に選手を引退、その後は解説者として活躍の場を広げ、2018年からは慶應義塾大学ソッカー部のコーチとして指導者としての第一歩を踏み出したところである。  今回はそんな戸田に各年代でフランス代表に選出され、19歳にして世界のトップスターとなたエムバペについて、そして有望な若手について、そしてこれまでのサッカー人生について大いに語ってもらった。

日本の早熟の天才たち

 筆者が翻訳を務めた『エムバペ 19歳で世界を獲った男』(扶桑社刊、2018年9月発行)では、二人の男を念頭において訳にとりかかった。この二人の男とは、久保建英と将棋の藤井聡太である。  世の中には19歳で世界一になった男がいる。そのスピード感を考えたら、君たちはもっと急がないといけないのではないかい、ということだ。  この二人には圧倒的な天性・才能がある。それは筆者も含めた一般人には絶対に手の届かない世界に行ける可能性を与えられているということだ。だからこそ、凡人と同じように遊ぶヒマや自由はない。それがNoblesse Oblige(高貴なる者の義務)というものだ。  筆者は久保建英とは面識がない。藤井聡太は彼が12歳の時から知っている。つい先だって、藤井聡太七段は新人王を獲得した。筆者のところにも「おめでとうございます」と友人からメッセージが届いたが、「アホか、全然おめでたくない」と答えた。  本来、藤井聡太の潜在能力を考えたら、新人王くらいで喜んではダメだ。少なくとも、八冠のうち二つくらいはすでに獲っていないとおかしいのだ。彼はすでに予定より遅れている、遠回りしているという認識が自身にも周囲にも必要である。  久保建英もそうだ。19歳でW杯優勝、という基準で考えれば、17歳の今J1で半レギュラーというのは、いかにも遅すぎる。本来なら少なくともJ1で無双状態になり、バルセロナでなくともいいからスペイン一部のどこかからお声がかかっていないとおかしい。現にスペイン一部のバレンシアにはイ・ガンインという17歳の韓国人選手がいるではないか。あれが本来の彼のあるべき現在の立ち位置である。  マリノス移籍会見の深刻な表情を見ると、その点を本人はほかの誰よりも自覚しているのではないかと思う。それくらい、筆者は大きな期待をしているのだということだ。  まず戸田に現在の久保建英の立ち位置について聞いてみた。
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戸田が見た「久保建英」と、スペインのフットボール
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