エムバペのように、10代で世界一になる才能をどう育むのか? 元サッカー日本代表・戸田和幸が語る

戸田の見た「久保建英」、そしてスペインのフットボール

「マリノス移籍のときの顔を見ると、FC東京のソリッドな442のサッカーの中でも結果を出さないといけなかったのですが、なかなか思うようにはいかず多少の焦りはあったんだろうなと感じました。彼は特別な才能を持ち、またバルセロナという特別な環境にてその才能を育んできました。  ですから出来れば一日でも早く本場に戻りトップレベルの厳しい環境の中でその類まれな才能に磨きをかけて欲しい。なぜかというと、例えばダビド・シウバや、ジョルディ・アルバといった世界的な評価を獲得しているが身体的には恵まれてはいない選手も二部の厳しい環境、戦術的にも高いレベルを要求されつつ、ボディコンタクトが多くなるハードなリーグで揉まれながら上に羽ばたいていった事例があるからです。  スペインの二部に所属するような選手もベースというか基盤となるような技術や個人戦術はみんな兼ね備えていると思いますが一部でプレーする選手達とはやはりレベルは違います。  ですから二部リーグはより戦術面で規律が求められているし、見る側から感じる『美しさ』まで到達出来ない事も多くなりますが、その分フィジカルの要素は多くなり肉体のぶつかり合いも増えます。  昨年冬に指導者としての学びを得る為にスペインに行きましたが、育成においてもスペインは下は小さな街クラブから上はラ・リーガ1部に至るまでものすごい階層があって、その全てのクラブが真剣に勝利を目指して、日本以上に勝利至上主義のもとしのぎを削っていると感じました。 “育成だから勝てなくても良い”ではなく、身体の中にきちんとした教科書を持った選手を育成しながらもそのクラブとして結果を残す為に最も確率の高いサッカーをする。  だから街クラブがラ・リーガに所属するクラブと対戦する時には徹底的に守備的に固めるところから勝利を目指す、その方法が具体的できちんとしているという印象を受けました。スペインには戦術的にも幅の広い、ハードワークする理由の存在するサッカーがあると短い滞在ではありましたが強く感じました。  攻撃であればチームとしての具体的なボールの運び方、その中でのポジショニング、そしてゴールを目指すうえでの優先順位や判断基準がきちんと存在し、チーム毎に存在し行われる駆け引きの中で、自分に与えられた役割を念頭に置きながら自分だからこその答えを出していく。  何人かの指導者にインタビューをさせてもらいましたが皆知識レベルが非常に高く、また包み隠さずに話をするオープンマインドを持ってることにも大きな感銘を受けました。  スペインに行って指導者の知識レベルの高さを実感し、そこで行われている指導を見ても、攻守にわたって非常に具体的で選手にダイレクトに伝わるようなものが行われていました」
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「とにかく走れ」と教える日本、「何のために走るのか」を教えるスペイン
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