有村架純も演じた“鉄道ウーマン” 。育休と勤務体系の両立が課題に
最近、めっきり増えた印象が強い、女性の電車運転士や車掌さん。特に都心なら女性駅員まで含めれば、1日に1度も見かけないほうが珍しいくらいだ。読者のなかにも、「女性の鉄道職員が増えたなあ」と実感している人もいるのではないか。さらに11月30日には有村架純が肥薩おれんじ鉄道の女性運転士役を務める映画『かぞくいろ』も公開される。少なくとも、今や鉄道の世界は高倉健よろしく“男の職場”ではなくなっているようだ。
では、こうした傾向はいつ頃から始まったのか? 『それゆけ!女性鉄道員2』で取材・執筆を担当したライターの鼠入昌史氏に話を聞いた。
「鉄道の現業職員への女性の採用が本格的に始まったのは‘94年のJR西日本が最初だと言われています。その後、労働基準法の改正や男女雇用機会均等法の施行により、90年代後半からほとんどの鉄道事業者が本格的な採用を進め、今では管理部門で腕をふるっている鉄道ウーマンも少なくありません。JR各社や大手私鉄などではもちろんですが、地方ローカル線も人員確保という観点から女性の採用に積極的。まだまだ比率としては2割程度といいますが、これからますます増えていくことは間違いないでしょう」
とはいえ、課題も少なくないという。ひとつは、鉄道の現場は昼夜を問わず働くことが求められる点。鉄道は早朝から夜中まで走り続けているので、当然鉄道ウーマンもそれにあわせた働き方が求められる。
「駅員や車掌、運転士などは泊まり勤務が当たり前。乗務員区などにある仮眠施設でわずかな睡眠をとって、始発の列車に乗務するなどの勤務を当然に女性も行っています。そのため、女性のための仮眠施設や風呂などの施設面を整備する必要がある。大手事業者では積極的にこうした設備投資も進めてきましたが、地方ローカル線では資金面の課題もあって遅れを取っていた。まだ女性のための設備が充分でないところもあり、ひとつの課題と言えるでしょうね」
さらに、鉄道の現場で活躍する女性が増えるにあたって新たに浮上してきたのが産休・育休や育児との両立。産休や育児休暇が取れないという事業者はさすがにないが、昼夜を問わない勤務体系では育児との両立はひときわ難しくなる。
「実際に取材したなかでも、周囲の協力がなければ子育てとの両立は難しかったという声を聞きました。保育園に預けるにしても、鉄道の勤務は不規則ですから朝預けて夕方迎えに行く……というわけにはいきません。ダイヤが乱れた場合には予定通りに退勤できるとも限りませんし……。夫婦での協力はもちろん、親の協力、さらに職場の理解などがどうしても必要だと感じます。子育て中の女性職員に対して日勤のみのシフトを採用している事業者もありますが、それはそれで他の職員への負担が増してしまうという問題も出てきます」
女性の社会進出につきまとう課題は鉄道の世界でも同じどころか、むしろ一般企業以上に深刻なようだ。
不規則な勤務体系がネックに
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