西谷氏は、またまたバイトしたテーマパークから。山西省武郷県という、中国の内陸のど田舎にある「
八路軍文化園」だ。
反日テーマパークで上演された劇の一場面(写真:西谷格)
表向きは中国の軍隊や戦争の歴史を学ぶ施設ということになっているが、実態は「
反日テーマパーク」。ひたすら
日中戦争をネタにして遊ぶというレジャー施設である。
「写真は大体15分ぐらいの劇の一場面です。
日本兵と、極めて善良な中国人民と、憎き日本兵をやっつける中国軍が出てきます。大きな口を開けて叫んでいるのは日本兵(写真右)ですが、反日ドラマでよくあるように、ちゃんとステレオタイプで描かれている。写真のシーンは、たしか
日本兵が人民に下剤かなんかを飲まされて、お腹が痛くなって悶えるみたいな、ちょっとコントっぽい流れにもなっていました」(西谷氏)
「日本兵」を的に射撃ゲームに興じる子供たち(写真:西谷格)
また、屋外では
日本兵を的にして射撃を楽しむという非常に悪趣味なコーナーが。
そこには
幼稚園生ぐらいの子と若い母親が、和やかな雰囲気の中で休日のレジャーを楽しみながら、日本兵をバンバンと撃つ光景があった。あとはサバゲーのように日本軍、中国軍に分かれて、お互いに撃ち合うゲームも。もちろん、西谷氏も参加した。
「レーザービームみたいなので当たったら何点と一応カウントしてたんですけど、機械の調子が悪いのか、
結局最後点数がよくわからなくなって……。係の人が『じゃあ今回は中国の勝ち』と、すごい雑な感じで締めくくっていました。」
ただ、西谷氏によると中国ではここ数年、
「反日」でもこうしたバカバカしいものはやめようという流れがきているという。
「こういう施設もなくなっていく可能性が高い。非常にアクセスは悪いですが、中国へお越しの際はぜひお勧めしたいスポットの一つですね(笑)」(西谷氏)
そして、水谷氏は
ミンダナオ島のマラウィでの経験を語った。
戦闘真っ只中のミンダナオ島(写真:水谷竹秀)
フィリピンのミンダナオ島マラウィはマニラから飛行機と車で2~3時間程度。フィリピンはキリスト教徒が93%であるが、イスラム教徒も5%ほど存在する。特にミンダナオ島はイスラム教徒が人口の2割を占め、他地域より多い。ここで、昨年5月から約半年近くにわたり、
IS(イスラム国)に忠誠を誓った過激派とフィリピン国軍が戦闘を行なった。水谷氏はなんと、その取材に身を投じていたのだ。
「6月ぐらいに某雑誌の編集者から『ちょっと行ってきてもらえますか』と依頼<されたのですが、でも僕は
戦場経験がないので、どう行けばいいかわからない。そこでフィリピンの仲のいい記者に連絡をとると『来るなら
防弾チョッキとヘルメットを持ってきて』と言われました。『危ないのか』と聞いたら『もちろん危ない』と。どのぐらい危ないかというと、僕が行く少し前に、オーストラリア人ジャーナリストが被弾し、首に銃弾が突き刺さった。命は助かったけれども、巻き込まれる可能性があるという状況でした」(水谷氏)
そこで、とりあえず
ビックカメラ等に「すみません、防弾チョッキとヘルメットは置いてますか」と問い合わせると
「そんなもの置いてません」と言われた水谷氏。結局、フィリピン人の記者に借りて現地入りすると、街は空爆でめちゃくちゃになったが、LINEは通じる状況だったという。現場は銃弾がすさまじく行き交い、まるで戦争映画のよう。
LINEで編集者に「今、空爆が起きてます」と、リアルタイムでやり取りをしたという。
窓ガラスの弾痕が戦闘の激しさを物語る(写真:水谷竹秀)
「外国人でここに入ったのはたぶん、日本人で僕が最初だと思います。この
現場はもうゴーストタウンと化しているので、全然人もいない。いるのは軍と州政府の関係者、あとは記者くらい。結局1000人ほどが亡くなりました。今はとりあえず収束しましたが、フィリピンの南部では、このイスラム過激派とフィリピン国軍が和平交渉中で、いつ何どきこういう状態になりかねない」(水谷氏)
ミンダナオ島のISが使う兵器はどこから来ているのか?
「国軍と言われています。国軍から例えば政治家や地元の有力者に流れ、そこから過激派に流れていく。というのも、
過激派が死亡した現場の銃器類を国軍が押収してみると、国軍と同じだったりすることがあるそうです」(水谷氏)