そして日本が運用する衛星測位システムが「みちびき」である。よく「日本版GPS」とも呼ばれるが、GPSなどがGlobal、すなわち地球上のどこでも測位ができるのに対し、「みちびき」は日本周辺と東アジア、オセアニア地域でしか測位することができない。
というのも、もともと「みちびき」は、日本周辺などにおいてGPSを補完、補強することが目的であり、全世界を対象にしたものではないからである。
GPSを使って位置を測位するには、4機以上の衛星から信号を受け取る必要がある。そして安定した位置情報を得るためには、より多くの衛星を使うことが望ましい。
しかし、都市部や山間部では、ビルや樹木などに衛星からの信号が遮られてしまい、利用できる衛星の数が減り、位置情報が安定的に得られないことがあった。
そこで「みちびき」は、日本の上空に長く滞在できる「準天頂軌道」という特殊な軌道と、赤道上空の高度3万6000kmにある静止軌道に、GPSと互換性のある信号を出す衛星を配備することで、GPSを”補完”する。これにより、従来より1割ほど安定が増すという。
また、測位に利用できる衛星の数が増えることで、位置の誤差も改善する。たとえばGPSだけを使った測位では、最大10mの誤差が生じるが、「みちびき」を足して使うことで、最大1~2mになる。
さらに、「みちびき」だけが出せる特殊な信号も使うことで、誤差約6cmという高い精度での測位も可能となる。こうしたGPSの”補強”も、「みちびき」の大きな目玉のひとつである。
また、「みちびき」を介してメッセージの送受信ができる機能もあり、災害情報の発信や安否確認などにも活用できる。
「みちびき」の模式図。準天頂軌道と静止軌道を回る衛星から構成されている (C) JAXA