高プロの「自由」の正体。それは、経営者が深夜でも気兼ねなく働かせることができる「自由」だ

深夜でも働かせたい経営者

 無理やり「自由な働き方」にこじつけられた上記のような説明を離れて経営者の意向を率直に見てみれば、それは深夜に割増賃金なしに働かせることができる「自由」を、高プロ適用によって経営者が享受できる、ということだ。  そのような経営上の自由さを得たいという意向は、働き方改革の法案要綱が固まる前の2017年7月の時点では日本経済新聞で率直に語られていた。例えば次の通りだ(なお、記事にある「脱時間給」とは、高度プロフェッショナル制度のことで、日本経済新聞による独特の呼び方である)。 “政府は2015年4月、脱時間給の導入案を持った労基法改正案を国会に提出。コンサルタントらに柔軟な働き方を促し、成果が出れば1日2時間勤務を認めたり、逆に繁忙期に深夜作業できたりする制度の実現を検討してきた。働き手の裁量を増やし、企業の生産性を高める狙いだ。”(出典:日本経済新聞2017年7月11日「『脱時間給』法案を修正 連合と調整、制度化へ前進」) “今回の制度が導入されると具体的にどんな影響が出るのか。例えば、経営戦略コンサルタントは日々の決められた仕事ではなく、社内チームで取り組む数カ月のプロジェクトを基本に仕事をすることがことが多い。繁忙期であるプロジェクト期間は夜通し仕事し、プロジェクトが終われば長期休暇を取ることも可能だ。”(出典:日本経済新聞2017年7月25日「『脱時間給』で綱引き 政労使、調整急ぐ」)  どちらの記事でも深夜の勤務が取り上げられている。前の表に示したように、高プロだと深夜割増の支払いが不要になるからだ。  そしてどちらの記事でも深夜の勤務について「繁忙期」という表現があるのが注目される。「繁忙期」とはつまり、業務の必要性だ。「クローズアップ現代+」の絵解きに描かれていたように、個人が「やりたい時 仕事」と選ぶものではない。  また、高プロの省令・指針の内容を検討する労政審としては2回目の第148回労働政策審議会労働条件分科会(10月31日)(参照:配布資料)では、対象業務の素案として「金融商品の開発業務」「金融商品のディーリング業務」「アナリストの業務」「コンサルタントの業務」「研究開発業務」の5業務が事務局より提示されたが(参照:資料No.2)、この労政審の場で経営側の委員からは、 「金融はグローバルな視点から、より柔軟な時間法制が必要だ」  との意見が出たという(参照:日本経済新聞2018年10月31日「脱時間給、厚労省が対象5業務を提示」)  この「金融」「グローバル」についても、グローバルな金融市場に対応するには深夜の業務が必要、という事情が念頭に置かれているのではないだろうか。  これらを見れば、実際には高プロは経営者の意向で導入が求められたものであり、労働者のニーズに基づくというのは嘘の理屈付けだったと言わざるを得ない。高プロが「自由な働き方の選択肢」だというのも、やはり嘘の説明だ。深夜に働きたい人が、深夜割増を嫌がる使用者のプレッシャーなしに働けるという無理な理屈付けも、やはり嘘の説明だ。  実際には、深夜割増を支払わずに深夜にも働かせたい、そういう話だ。  そういう話だという「ぶっちゃけ」が言えないために、悪徳商法のような高プロ説明のリーフレットを厚労省が用意したというのが、ことの顛末だ。  さて、皆さん、これを黙って見てますか? <文/上西充子 Twitter ID:@mu0283> うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。
Twitter ID:@mu0283 うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。単著『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)ともに好評発売中。
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