高プロの「自由」の正体。それは、経営者が深夜でも気兼ねなく働かせることができる「自由」だ

深夜割増をもらわずに働ける「自由」

 なぜAさんが「やりたい時 仕事」のシチュエーションが深夜なのか。それは高プロが、深夜割増を支払わずに済む働かせ方だからだ。  裁量労働制でも管理監督者でも、時間外労働については実態に応じた時間外割増の支払いは不要だが、深夜割増については支払いが必要となっている。その規制が、高プロでははずれるのだ。 kopro8 だから高プロの利点を示すには、「深夜」である必要があるのだ。しかしその利点とは、使用者にとっての利点ではないのか?深夜割増を支払わずに働かせることができるのだから。それが労働者にとっての利点や「自由」である、という理屈付けはできるのか?  その理屈付けを無理やりやろうとしたのが、6月5日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員に対する加藤厚生労働大臣(当時)の答弁である。じっくりご覧いただきたい(発言は国会会議録より抜粋。太字は筆者)。 -------------------- ○福島みずほ議員:時間でなく成果で評価することと、高プロを導入し、労働時間、休日、深夜に関する使用者への義務付けが全て適用除外とすることは何で結び付くのか。具体的に言えば、仕事が終わったので早く帰る、私用があるので遅く出勤する、どこかのサテライトオフィスで仕事をしたい、これは使用者が認めれば今でも可能ではないですか。 ○加藤勝信厚生労働大臣:そういった働き方も一部可能であることはそのとおりでありまして、それぞれ裁量労働制でありフレックスタイム制であり、そういったものを活用するというのはありますけれども、しかし、それについても、いずれにしても、例えば裁量労働制であれば、みなしと実労働時間の乖離、あるいは休日、深夜と、そういった意味での規制が掛かり、そしてまたそれによって時間に応じた賃金というものも出てくるわけでありますから、やっぱりそういった労務管理あるいはそういった管理下の中よりは、むしろそこから解き放されて自由にした方が自分としてよりその力を発揮できる、こういう方たちがおられるわけでありますから、そういった皆さん方のその希望を実現する中によって、その方の持っている創造力とか付加価値をつくる力、それを十二分に出していただくと。(以下略) ○福島みずほ議員:いや、全くおかしいですよ。管理監督者だろうが裁量労働で働く人だろうが、深夜労働も休日も可能なんですよ。唯一、割増し賃金が、管理監督者だったら深夜業だったら付くとかあります。それ、不利なのは使用者じゃないですか。労働者は別に何にも困らないですよ。もちろん、長時間労働は嫌だけれど、深夜業だって休日だって働けるわけですよ。働けるわけですよ。何にも問題ない。今おっしゃったのって使用者の都合じゃないですか。(以下略)   ○加藤勝信厚生労働大臣:いや、ですから、先ほど、ちょっとその前の、今の最初の御質問でありますけれども、そういった中において、やはり休日であり深夜であれば当然割増しの賃金にもつながるわけでありますから、使用者側からいえば、そういう時間帯じゃなくてこっちの時間帯で働いてくれと、こういうことになるわけでありますけれども、働く側からすれば、いやいや、そうじゃなくて、自分としてはこういう方がより自分のペースにも合うし、その力を発揮したいということでありますから、そういうプレッシャー……(発言する者あり)いや、ですから、そういう、払えばいいんじゃないです、そういうプレッシャーが掛かってくることが結果的にそういった時間帯で働けないということになるので、そういった規制を外して力を発揮したい、こういうことであります。(以下略)   ○福島みずほ議員:論理が破綻していますよ。深夜業だろうが休日労働だろうが、労働者、割増し賃金もらって働く、別に構わないですよ。割増し賃金もらって頑張って働きますよ。今の論理って使用者側の論理じゃないですか。  今だって管理監督者、深夜業の手当があるし、でも、今の大臣の答弁は労働者の立場じゃないですよ。労働者は別に割増し賃金もらって休日労働、深夜業すればいいんですよ。それが嫌だ、問題だというのは使用者の論理でしょう。(以下略)   ○加藤勝信厚生労働大臣:前段の質問とも絡むわけですけれども、それは使用者側からいえば、逆に言えば、そういう時間ではなくて、本来のこっちの時間で働いてくれとか、そういうことにつながるわけですね、深夜だったら割増しをしなきゃいけないとか。だから、そういうプレッシャーから外れて、やっぱり自分が、いやいや、昼はなかなかうまく働かないけれども夜がいいとか、あるいはいろんな働き方の人がいると思います。そういった形で、自分に合った働き方をするということによってよりその力を発揮したいという方がおられるわけでありまして、別にそうでない方にその適用をしようと言っているわけではなくて、そういった方々がそうした働き方ができる選択肢をつくろうというのが今回の高度プロフェッショナル制度ということになるわけであります。  また、これ、それ以外にも様々、やっぱり時間的な制約等々があることに対する議論、議論というか、思い等々、この中にもあるんではないかというふうに思います。 ○福島みずほ議員:やはり論理破綻していますよ。これ、時間の制約なんかだったら、今だって、さっきも言ったように、仕事が終わったので早く帰る、私用があるので遅く出勤する、どこかのサテライトオフィスで仕事をする、可能なんですよ。割増し賃金払ってもらって深夜業やったって休日労働やったっていいんですよ。 --------------------  そう。福島みずほ議員が言うように、論理が破綻している。今でも深夜には働かせることはできる。使用者が深夜割増賃金を支払うことは必要だが。  それに対して加藤厚労大臣(当時)は、深夜に働きたいという人がいても、使用者としては割増賃金を支払わなければいけないので、深夜に働かないでくれというプレッシャーをかけることになる、それが高プロだとそういうプレッシャーなしに働ける、と主張しているのだ  つまり高プロの「自由さ」とは、深夜(や休日)に働くと割増賃金が必要になるため使用者がそれを嫌うが、そのような使用者のプレッシャーなく深夜(や休日)でものびのびと働ける自由さだ、というわけだ。しかしそれはやはり、福島みずほ議員が指摘するように、労働者の立場に立った説明ではなく、経営者の論理だろう。
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深夜でも働かせたい経営者
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