多瑠都 / PIXTA(ピクスタ)
2011年3月に福島第一原発事故が発生して以降、日本政府が中心となり、放射能汚染を受けた地域の住民に対する避難や除染、そして帰還を支援する政策が行われていることは周知の通りである。その日本政府の政策に対し、10月25日の国連総会にて、国連人権理事会の特別報告者バスクト・トゥンジャク氏が苦言を呈した。各新聞報道や国連のプレスリリース(参照:
国連人権委員会リリース)によると、その要点は次のようであったらしい。
・日本政府には、子供らの被ばくを可能な限り避け、最小限に抑える義務がある。
・子供や出産年齢の女性に対しては、避難解除の基準を、これまでの「年間20mSv」以下から「年間1mSv」以下にまで下げること(※mSvはミリシーベルト)。
・無償住宅供与などの公的支援の打ち切りが、自主避難者らにとって帰還を強いる圧力となっている。
なお、国連人権理事会は2017年にも同様の声明を出しているが、日本政府にそれに従った様子が見られないため、今回の国連総会で改めて通達された。
国連人権理事会からのこういった苦言に対し、日本政府側は、「避難解除の基準は
ICRPの2007年勧告に示される値を用いて設定している」、「こういった批判が
風評被害などの悪影響をもたらすことを懸念する」などと反論したそうである。
本稿では、国連の特別報告者が投げかけた論点のうち、避難解除の基準、すなわち、「
年間20mSvか年間1mSv」か、について考えてみたい。筆者には、国連側の言う「年間1mSv」にまで下げることが本当に良いのかどうかは判断しきれないところがあるが、しかし、日本政府側の「年間20mSv」については
明確に“おかしい”と言うことができる。今はもう、基準を年間20mSvより低く設定し直すべき時にきている。どういうことか、以下でなるべく簡単に説明しよう。