3か月過ぎても復興進まず。平成30年豪雨被災地、肱川水系の現在

牧田寛
 去る2018年7月7日、未曾有の豪雨によって西日本広域で歴史的な大水害が発生しました。

野村保育所

被災した野村保育所の内部 2018/10/20撮影

 当日、高知県でも高知自動車道の流失と通信線切断による全県における電子決済(電子マネー、クレジットカード)の停止、一部河川の危険地域における氾濫が生じましたが、1998年の高知大水害(以下、98高知大水害)のような社会機能を破綻させる大きな水害は発生しませんでした。これは、98高知大水害を契機に中小河川での堤防かさ上げと補強、橋梁のかさ上げ、河道浚渫、排水ポンプの整備、水門の整備など、運用面を含めた過去20年間の地道な高知市・県による治水対策の結果と言えます。

 これらの治水対策は、華々しさに欠け、目立つものではありませんが、高知市大津、高須、葛島地区と言った、98高知大水害で2〜3m浸水した人口密集地区で聞き取りをしても、かつては毎年何処かが浸水していたのに、最近は浸水しなくなったという証言が得られることからも妥当な治水事業であったと考えられます。

 そういった中、隣県の愛媛県で大水害が生じた、しかも伊方取材でいつも通過する肱川(ひじかわ)水系で死者の出る大水害が発生したと報じられました。最終的に野村町で5名、大洲市で4名の計9名の人命が失われたとの報です。

 私は、水郷延岡で育ち、治水ダムの存在しない五ケ瀬川・大瀬川の治水を基準に物事を考えますが、肱川水系には鹿野川ダムと言うデラックスな治水主体で県営水力発電も行う多目的ダムと、野村ダムと言う利水主体で限定的治水を行う多目的ダムがあり、大洲市街地の堤防はかなり立派なもの、菅田地区にも一部未完成ながらかなり立派な堤防を建設中ですので、21世紀にもなって一級河川全流域での大規模氾濫が生じたことに強い違和感を抱きました。

 これは取材をせねばならないと考えつつも機会がなかったのですが、9月30日に伊方発電所の再稼働に関するシンポジウムが八幡浜市で行われる、台風が来てもやれるところまでやると言う事で、肱川水系の取材をかねて9月29日から八幡浜市に泊まりがけで訪問しました。

 これから数回にわたって、野村ダムから大洲市までの流域約40kmと支流の黒瀬川の被災状況を、写真主体にご紹介し、何故、何が起きたのかを考察します。なお本稿では、「平成30年7月豪雨による肱川水系の水害」を「肱川大水害」と呼称します。

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野村ダムから3km下流で一変した風景

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