厚労省の高プロ制紹介に見る欺瞞。政府は、野党の次は国民を騙しにきた

高プロの本質は、労働時間規制の適用除外

 高プロの本質は「自由な働き方」ではない。「自律的で創造的な働き方」でもない。使用者を縛っていた労働基準法の労働時間規制を適用除外(エグゼンプション)した働き方だ。具体的には下記の表のとおりだ。 労働時間等の規定の適用状況 働き方改革関連法のうち高プロに係る規定の主要部分は下記だ。 (労働基準法第41条の2) ”……ときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。”  いろいろと条件を付けた上で、その条件を満たした場合には、労働基準法の第4章の上記の規定は、は、高プロの対象者には適用しなくてよい、というのが高プロ制度の意味するところだ。  この労働基準法の第4章とは、 ●使用者は・・・労働させてはならない ●使用者が・・・支払わなければならない ●使用者は・・・与えなければならない というように、使用者を縛っているものであって、労働者を縛っているものではない。  時間外・休日労働をさせる場合には36協定を結んでその範囲でしか残業させてはならない、また、その場合でも、時間外・休日労働に対しては割増賃金の支払いを行わなければならない、そのような縛りをかけることによって、過重労働を防いでいるのがこの労働時間規制だ(参照:上西充子「高度プロフェッショナル制度「きほんのき」(1):「労働時間の規制を外す」→でも労働者は時間で縛れる」)。  したがって、高プロによって「自由」になるのは、使用者であって、労働者ではない。労働者が指揮命令を受けないとか、裁量性を確保されるとか、そういう規定は法改正の条文のどこにもない。裁量労働制については始業・終業時間の指定をしないこととする規定を法改正によって設けようとしていたが(拡大案の廃止と共に廃止)、そのような規定も高プロでは予定されていない。
次のページ
欺くためとしか思えないリーフレット
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会