政治への諦めを生まないための、最低限の改革策とは?<民意をデフォルメする国会5重の壁・最終回>

政策・能力を比較して選ぶ

 選挙運動ルールについては、立会演説会と戸別訪問、インターネット、マスメディア(政見放送等)、公営掲示場に限定することがベストです。組織力の差でなく、政策や能力の差で選ばれるようにするわけです。代わりに、拡声器による街頭演説、街宣車による連呼、公選ハガキ、個人演説会、幕間演説、チラシ配布などを廃止します。政党などによる街頭演説は、回数や場所を限定して認めるのもありでしょう。  立会演説会は、選挙管理委員会のセットで候補者が一堂に会し、順番に演説するものです。誰が傍聴に来ても構いません。かつては行われていましたが、1983年から廃止されています。廃止の理由は、来場者の減少や有力候補の反対などといわれています。これを復活させ、1候補20分、TEDのようなプレゼン可にして、選挙期間中、選挙区各地で開催してまわれば、有権者が比較検討できます。  戸別訪問は、候補者が住宅などを訪ね、有権者と対話するものです。日本では、買収の恐れがあるとして禁止されています。買収やルール違反への罰則を厳しくした上で、これを候補者本人に限定して解禁してはどうでしょうか。  とはいえ、大幅なルール変更には、組織選挙に依存してきた政党や議員からの抵抗も考えられます。立会演説会も戸別訪問も、閣僚経験者などの有力な候補からすれば、面倒くさいものです。  そこで、最低限の改善案として、街宣車による連呼と公選ハガキを廃止するとともに、掲示場へのポスター貼りを選挙管理委員会で行ってはどうでしょうか。後者は、選挙運動期間を伸ばし、選挙開始の数日後に、予めポスターを貼った掲示場を設置するのです。また、掲示場は多数ありますが、学校や公園などの設置しやすい場所が選ばれているため、効果的でありません。駅やバス停、ショッピングセンター、コンビニなどの人の集まりやすい場所に設置する一方、掲示場の数を減らせば、掲示場の効果を増しつつ、設置費用を減らせます。公選ハガキの廃止も、選挙費用の抑制につながります。

衆議院では党、参議院では人を選ぶ

 選挙制度については、衆議院では党を選び、参議院では人を選び、なおかつできる限り世論をそのまま反映する仕組みがベストです。本連載の第三回で解説したとおり、衆議院は政党を通じた政権選択をする場ですし、参議院は政党間の決定をチェックする場だからです。  衆議院では、比例を全国区とする小選挙区比例代表併用制が適当と考えます。これは、現行の小選挙区比例代表並立制と名前こそ似ていますが、まったく異なる原理の制度です。原則として、各党の獲得議席は、比例での投票で決まります。比例当選者は、小選挙区の当選者から埋まっていきます。例えば、比例で10議席を獲得し、小選挙区で3人当選した政党であれば、比例10議席の上位3つを小選挙区当選者の3人で占め、残りの7つを比例名簿の上位から順番に占めていきます。  本制度のメリットは、比例を基本としつつ、個人で選ばれることも可能にする点です。比例での獲得議席よりも、小選挙区での獲得議席が上回った政党は、それら小選挙区での議席を活かすことができます。中村喜四郎さんのように、無所属での当選も可能です。小選挙区比例代表併用制では、比例定数よりも増えてしまう議席(超過議席)を認めることで、地域性も尊重します。  参議院では、全国8~12区程度の大選挙区制が適当と考えます。候補者の個人名で選ばれるため、政党所属であっても、相対的にその影響力が弱くなります。無所属や小政党の候補も当選しやすく、政党中心の衆議院をチェックする意思と能力が高まるでしょう。  しかし、小選挙区を中心とする現行制度の大幅な変更は、現職議員たちの強い抵抗に合うでしょう。簡単に実現できるとは、思えません。  そこで、最低限の改革案として、衆議院の小選挙区と比例区の定数を同数にし、比例区を11ブロックから全国区に変更してはどうでしょうか。例えば、衆議院の定数を450とするならば、225を小選挙区、225を比例とするのです。なお、参議院については、既に公明党が公式の参議院改革案として大選挙区制を示しているので、俎上にあるといえます。  このような改革案を示すと、議員の地方代表としての性格が弱まるとの批判をしばしば受けますが、心配ありません。地方の意見は、知事や市区町村長、自治体議会の議員たちに委ねればいいのです。実際、そのために「国と地方の協議の場」が法律で定められていて、これを強化すればいいのです。国会議員には、国政に専念してもらいましょう。
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