大政党ほど有利に働く、日本の選挙制度<民意をデフォルメする国会5重の壁・第3回>

田中信一郎
選挙イメージ

イラスト/いらすとや

選挙区によるデフォルメ

 小選挙区は、選挙制度における最大のデフォルメ要因です。衆議院の定数465のうち289議席、参議院の定数242のうち58議席が小選挙区(1人区)の選出です。そのメカニズムは、ハーバービジネスオンライン「一部の熱狂的支持さえあれば安倍政権は強気でいられる。民意と乖離した権力を生む小選挙区制の弊害」で解説しました。

 2017年の総選挙では、小選挙区が自民党と公明党を有利にデフォルメしました。自民党は、小選挙区での得票総数2,650万票(投票総数に占める割合52.1%)に対し、215議席(小選挙区選出議席数に占める割合81.7%)を得ました(以下同じ)。立憲民主党は、472万票(9.2%)に対し17議席(6.4%)。希望の党は、1,143万票(22.4%)に対し18議席(6.8%)。公明党は、83万票(1.6%)に対し8議席(3.0%)。共産党は、499万票(9.8%)に対し1議席(0.3%)。維新の会は、176万票(3.4%)に対し3議席(1.1%)。社民党は、63万票(1.2%)に対し1議席(0.3%)でした。(『枝野幸男、魂の3時間大演説』注釈より)

 小選挙区がもっともデフォルメを起こすのは間違いありませんが、中選挙区でも、定数が少ないほどデフォルメは大きくなります。国政では、参議院の13都道府県選挙区が中選挙区に該当します。2016年の参院選では、改選定数2の茨城県、静岡県、京都府、広島県の計8議席は、自民党と民進党で4議席ずつ分け合い、その他の政党は候補者を出さず、立候補段階でデフォルメが起きていました。一方、改選定数6の東京都は、自民党2議席、民進党2議席、公明党1議席、共産党1議席となっています。東京都は31人の立候補者に対し、当選した6候補で7割以上の得票を占めていました。

 つまり、選挙区は定数が小さくなるほど、大政党に収れんするかたちでデフォルメが生じるのです。その他の民意は、候補者の存在しないことで選択肢として示されなかったり、死票として議席に反映されなかったりするのです。

比例によるデフォルメ

 選挙区ほど大きくありませんが、比例区でもデフォルメは発生します。

 比例区をデフォルメする第一の要因は、定数を小さくすることです。衆議院比例は、11ブロックに分けられているため、死票が発生しやすく、少数政党にとっては議席獲得が難しくなっています。

 2017年総選挙での比例区の結果を見てみましょう。自民党は、比例区での得票総数1,855万票(投票総数に占める割合33.3%)に対し、66議席(比例区選出議席数に占める割合37.5%)を得ました(以下同じ)。立憲民主党は、1,108万票(19.9%)に対し37議席(21.0%)。希望の党は、9,677万票(17.4%)に対し32議席(18.2%)。公明党は、697万票(12.5%)に対し21議席(11.9%)。共産党は、440万票(7.9%)に対し11議席(6.3%)。維新の会は、338万票(6.1%)に対し8議席(4.5%)。社民党は、94万票(1.7%)に対し1議席(0.5%)でした。その他、議席を獲得しなかった政党は、幸福実現党29万票、新党大地22万票、支持政党なし12万票、日本のこころ8万票でした。

 もし、衆議院比例が全国1区だった場合、議席の割合が得票率に近づきます。自民66→60議席(37.5→34.0%)。立憲37→35議席(21.0→19.8%)。希望32→31議席(18.2→17.6%)。公明21→22議席(11.9→12.5%)。共産11→14議席(6.3→7.9%)。維新8→11議席(4.5→6.2%)。社民党1→3議席(0.5→1.7%)となります。

 第二の要因は、日本で採用されている議席計算方法のドント式(議席を配分するための最高平均方式のひとつ)です。比例区での得票を議席に配分するには、様々な方式が考案されていて、300以上あるといわれています。大きく「最大平均法」と「最大剰余法」の2つに分けられ、ドント式は前者の代表的な方式です。

 ドント式に代表される最大平均法は、1議席ができるだけ多くの票を代表するように計算します。ドント式は「各党の得票数を1,2,3…,という自然数で順に割っていき、その商の大きい順に議席を与えていく」(川人貞史他『現代の政党と選挙新版』有斐閣)方式です。ドント式だと、多数得票の政党が少し有利になります。これを修正するため、奇数で割るサン=ラグ式などの修正方式もあります。

 最大剰余法は、投票総数と定数から1議席に必要な得票数を算出し、議席を配分します。1議席に必要な得票数の割り出し方に、いくつかの方式があります。

 ただ、どの計算方式を採用するにしても、得票率と比較して、選挙区ほど大きな差が生まれるわけではありません。一般的に、比例での定数の多少と計算方式では、定数の方が議席配分に大きな影響を与えます

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党を選ぶか、人を選ぶか?

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