山積する課題をクリアして、全員野球で「持続可能国家」へ
ただし、課題も山積している。鉄道に関しては徐々にそのネットワークを拡大しつつも、踏切の未整備などによる事故の多発や度重なる遅延など、電化以前の問題が多い。EVを導入するにしてもコストが高すぎるし、そもそもコスタリカは自動車を生産していない。水素エネルギーに至ってはまだ実証実験段階で、しかも政府は手を出さずに民間主導で開発されている。民間セクターからは法的整備を要求される始末だ。
とはいえ、大きな野望をまず掲げ、それに向かって「全員野球」を進めていくことで課題をクリアしていくのが、コスタリカの近現代史でよく見られるパターンでもある。エネルギー的にも炭素的にも、そしてもちろん経済的にも、国内で循環するモデルを構築できれば、「平和国家」から「環境立国」へと続いてきた世界におけるコスタリカの立ち位置を、「持続可能国家」にまで高めることになるだろう。引き続きこの国には要注目だ。
<文・写真/足立力也>
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に
『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。