中米で最も豊かな国となった、「丸腰国家」コスタリカ。次の戦略は「持続可能国家」
1948年12月1日に軍隊廃止宣言をしてから、もうすぐ70年を迎えようとするコスタリカ。その道のりは決して平坦ではなかったが、軍隊を持たない「丸腰国家」という選択は決して間違いではなかったという自信は、ほとんどのコスタリカ人に定着している。その彼らが次に掲げるビジョンこそ、「持続可能国家」だ。
そもそも中米の最貧国だったこともあって、経済発展は必須だった。そのために行った牧場の乱開発により、1980年代には自然保護が喫緊の課題となっていく。そこで、「エコツーリズム発祥国」として、環境保護と経済発展を両立させる針路に舵をきる。
気づけば、今では中米で最も豊かな国になった。2015年には「先進国クラブ」である経済協力開発機構(OECD)への加盟協議も始まった。国家戦略としてはおおむね成功していると評価していいだろう。
そのコスタリカが今世紀に入って掲げた国家戦略は、「再生可能エネルギー100%発電」と「カーボン・ニュートラル」である。2007年、当時の大統領であるオスカル・アリアス・サンチェスは、2021年までの国家目標として、再生可能エネルギーによる発電率100%とカーボン・ニュートラルの同時達成を目指すことを宣言。コスタリカは新たなステージへと進む決意を示したのだ。
再生可能エネルギー発電に関しては、2015年から約98%を水力・地熱・風力で発電し、ピーク時や供給不足時にほんのわずかの石油火力プラントを使う以外はほぼ達成している。電源構成としては、時期によって変動があるものの、おおむね水力が7割強、地熱が1割強、風力も同程度といったところだ。
先進国ほど重工業がなく、気候的に空調が必要なこともあまりないため、電力需要はそれほど高くない。とはいえ、需給バランスの変動に対応するために柔軟な電源構成が必要とされるのはどの国でも一緒だ。
そのため、国家戦略として電源マトリックスを策定し、それに従って電源開発を行なっている。量的にいえば、メインになるのは上記のように水力だが、雨季と乾季がはっきりしているコスタリカの場合、乾季の終わり頃になると水が不足することもある。そのため、割合としては大きくとも、電源として季節的不安定性があるため、コスタリカはこれをベース電源とは位置づけていない。
実は、わずか1割強の供給量しかない地熱発電こそ、この国のベース電源とされているのだ。地熱は供給が最も安定していて、定期点検の時以外はほぼフル稼働している。点検は順番に行うため、地熱がまとめてダウンすることもない(意図的に止めない限りは)。
その上に豊富な水力発電を上乗せし、足りない部分を風力で補う形で電源マトリックスを考えている。火力発電所は、そのマトリックスの中ではあくまで「緊急時のバックアップ電源」と捉えられている。
施設容量の割合でいえば、地熱は1割にも満たない。他方、火力発電所の施設容量は約2割。火力発電所の職員は、「最新型の“動かさない大規模火力発電所”で働くことが我々の誇りだ」と胸を張る。
現在、そのベース電源を強化するため、国家プロジェクトとして地熱発電所の開発を積極的に進めている。同時に、風力発電には民間企業が積極的に参加し、今年初めて風力による発電が地熱を上回った。ますます「年間を通じて再生可能エネルギーのみで発電」という野望に近づいている。
「エコツーリズム発祥国」から「再生可能エネルギー100%発電国」へ
クリーンエネルギーだけで発電するコスタリカ
ハッシュタグ