中米で最も豊かな国となった、「丸腰国家」コスタリカ。次の戦略は「持続可能国家」

「カーボン・ニュートラル国」から「脱炭素国」へ

風車

雨後のタケノコのように風車が増えるコスタリカでは、今年ついに風力発電が地熱発電の発電量を上回った

 ただし、炭素の排出量は増える一方だ。コスタリカのエネルギー需要のうち半分以上を占めているのは、輸送部門である。こればかりは、ほとんどが内燃機関で動いているため、そう簡単に脱炭素化できない。  加えて、右肩上がりの経済発展に伴って、自動車の台数もうなぎのぼりだ。この30年で人口は約3割増えたが、車の増え方はそれ以上。近年は「新生児登録数よりも新車登録台数の方が多い」ことがしばしばメディアでも話題にのぼるほどである。  しかしコスタリカは、炭素の排出と吸収の収支をゼロにするカーボン・ニュートラル達成後の先も、しっかりと見据えている。2030年から「脱炭素化」を始めることも明確に謳っているのだ。つまり、排出する炭素の絶対量を減らしていくということである。  カーボン・ニュートラルの達成は、主に炭素の吸収量を増やすことで達成される。しかし、それでは根本的な解決にはならないとコスタリカ政府は考えている。つまり、炭素の排出量を減らさなければならないと明確に認識しているのだ。とはいうものの、現状として炭素の排出量の増加はとどまるところを知らない。  そこで、車の台数が増えることを前提にしつつも、モビリティにおける炭素排出を削減するという大胆で野心的な目標を掲げた。方法は主に3つに分かれる。鉄道網の拡充と電化、自家用車におけるEVの導入、そしてバスやトラックなど大型車の水素燃料化だ。特に水素燃料に関しては、大統領就任式の際、アルバラード新大統領が水素バスに乗って式典会場に現れ、その強い意志を国内外に力強く示した。
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真の「全員野球」はコスタリカにあり
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