女性向けマーケティングを炎上させる男性経営者層のジェンダーバイアス

そもそも女性経営者が少ない日本

 一つの原因は、女性のマネジメント層が少ないことに有ります。例えば、先ほどご紹介した Unilever 社のボードメンバーには、二名の女性がいます。(参照:Unilever)  一方、日本の女性取締役比率は先進国では最低クラスです。東京商工リサーチによると、6割の上場企業で女性役員はゼロ、全体では3.8%にとどまっています。(参照:上場企業の6割がいまだ女性役員ゼロ、最も遅れている業界は?-日刊工業新聞ニュースイッチ)  フランス、ノルウェー、オランダ、アイスランド、スペインなどではすでにクオータ制(取締役会の中に一定数の女性を登用する)を義務付けており、カリフォルニア州でも女性の取締役を義務化する法案が話題になりました。  人口の50%が女性である以上、本来、男女のリーダーは人口比に従うのが自然でしょう。

意思決定が現場に降りてこない

 もう一つの原因は、意思決定が現場に降りてこないことです。  特に、権限委譲が行われず、上の承認が必要な組織であれば組織であるほど、その「上」に最適化したクリエイティブが増え、思い切ったキャンペーンが打ちづらいのが現状でしょう。  これは、結局のところ、あらゆるマーケティング・コミュニケーションにおいて共通する問題といえます。  つまり、実際にそれを見る人・使う人と、その決済を下ろす人の間に大きな乖離があり、それが解消されていないことこそ、日本の本質的な問題点であるといえます。  つまり、これらを総合すると、 マネジメント・リーダーシップが多様性を失い、均質化している マネジメントが、現場や顧客を理解できていると思い込んだまま、権限委譲を怠っている  この二つが、日本のマーケティングのブレークスルーを阻んでいるといえるのではないでしょうか。
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バイアスの先に、新しいマーケットがある
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